IDC Japanは4月6日、同社が今年の1月に実施した国内企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の成熟度調査の結果を発表した。それによると、成熟度は昨年に比べ大幅な向上が見られるという。

この調査は従業員1,000人以上の大規模企業に所属する部長クラス以上、あるいは、予算・企画等の意思決定者である係長クラス以上の533人に対してWebアンケート調査を実施し、これらを総合して国内ITユーザー企業のDXに対する取り組みの成熟度を分析したもの。調査は昨年に続き2回目となる。

同社では、デジタルトランスフォーメーション(DX)を、「企業が第3のプラットフォームや新たなデジタル技術を活用し、新しい製品やサービス、ビジネスモデルや価値を創造すること」と定義している。第1のプラットフォームがメインフレーム、第2のプラットフォームがクライアント/サーバ、そして第3のプラットフォームはクラウドを中心にしたプラットフォームだという。

IDCが考えるDX

そして、第3のプラットフォームで活用する新たなデジタル技術としては、AR/VR、IoT、認知システム、ロボティクス、3Dプリンティングなどを挙げる。

同社では、企業のDXに対する取り組みレベル(習熟度)を独自に開発しており、DXを構成する5つの特性ごとに成熟度を算出し、5つのステージで評価している。

DXを構成する5つの特性とは、リーダーシップ変革、オムニエクスペリエンス改革、ワークソース変革、運用モデル変革、情報変革だ。

DXを構成する5つの特性

DX成熟度の5つのステージ

DXのステージで、もっともレベルが低いステージ1は「個人依存」で、ITと企業戦略の分断、ITとビジネスの未連動、顧客エクスペリエンス戦略について未検討という特徴があるという。

ステージ2は「限定的導入」で、デジタル技術を活用した顧客志向ビジネスの重要性を認識しているが、その実行はプロジェクトベースで継続性が欠如している段階。

ステージ3は「標準基盤化」で、ビジネスとITのゴールは全社で整合性があり、デジタル製品や顧客エクスペリエンスを創出するが、デジタル化の破壊的可能性については未検討という段階。

ステージ4は「定量的管理」で、ビジネスとITのメネジメント指針が一体化して相乗効果を発揮し、デジタル技術を活用した製品/サービス/エクスペリエンスを継続的に創出できる段階。

そして、ステージ5はマーケットに破壊的な影響を与えるデジタル技術やビジネスモデルを積極的に活用し、エコシステムと連携し、フィードバックを取り込むことで、継続的にビジネスイノベーションを創出する段階を示す。

今回の調査では、ステージ1が3.7%、ステージ2が17.8%、ステージ3が46.1%、ステージ4が28.1%、ステージ5が4.4%で、国内企業の約半数が、5段階中3番目のステージで、企業戦略の一環として、全社的にDXに取り組む企業が増えているものの、その取り組みは短期的で、従来のビジネスの効率化が中心となっていることがわかったという。

今回の調査での国内デジタルトランスフォーメーションの成熟度ステージ分布

昨年の調査との比較。1つ上のステージにシフトしている傾向が見られる

IDC Japan ITサービス/リサーチマネージャー 木村聡宏氏は今回の調査結果について、「ステージ3以上の企業が約8割に上り、前年の調査に比べると成熟度には大幅な向上が見られ、全社的にDXに取り組む企業が大多数となっている。経営層を中心にDXの重要性に対する意識が高まっており、具体的な施策実行段階にシフトしている企業が多い」と分析する。

これには、メディアやベンダーがDXのメッセージを数多く発信しているため、経営層を中心にDXに対する意識が高まっている点や、ITのパラダイムシフトによって第3のプラットフォームへの移行が進んでいる背景があるという。

金融ではFintech、健康増進型保険、製造ではIoT導入促進、小売りではオムニチャネル、モビリティ、IoT、コグニティブ/AIシステム、公共では東京オリンピックに向けた防災、事故削減、渋滞緩和、社会インフラ整備に対する投資が期待できるという。

一方で、DXへの取り組みは短期的であり、革新的な製品やサービス、顧客エクスペリエンスを創出しているレベルにはいたってないと、木村氏は現状の課題を挙げる。

これらに対してIDCでは、まずは自社の成熟度がどの段階にあるかを客観的にに把握し、DXを構成する5つの特性ごとに自社の取り組みを分解する必要がある。そして、DXに対するビジョンとゴールを明確化し、次のステージに上げるための戦略を策定し、取り組み状況を常にモニタリングする必要があると提言している。