東京工科大学は2月27日、がんの診断に有益なゲノムのメチル化レベルを簡便に測定する新たな方法の開発に成功したと発表した。

同成果は、東京工科大学応用生物学部 吉田亘助教、軽部征夫教授らの研究グループによるもので、米国科学誌「Analytical Chemistry」2016年9月20日号に掲載された。

ヒトゲノム中のシトシン塩基のメチル化は、遺伝子の発現を制御する遺伝子スイッチとして機能する。正常細胞では正常なメチル化パターンが形成されるが、がん細胞中では、がん関連遺伝子のメチル化レベルが異常になり、ゲノムのメチル化レベルが低下することが知られている。したがって、これらのレベルを測定すれば、より正確ながん診断が可能になるといえる。

同研究グループはこれまでに、がん関連遺伝子のメチル化レベル異常を検出する方法を開発している。今回の研究では、メチル化DNAに結合するタンパク質(methyl-CpG binding domain)とホタルルシフェラーゼを融合させた人工タンパク質を合成。同人工タンパク質をヒトゲノムDNA中のメチル化シトシンに結合させる際に、ヒトゲノムDNAに結合する蛍光物質を加えておくと、ルシフェラーゼの発光により蛍光を発することを発見した。

蛍光強度は、ヒトゲノム中のメチル化シトシン量に依存するため、ヒトゲノムDNAに同人工タンパク質、蛍光物質およびルシフェラーゼの基質を加えるだけで、簡単にヒトゲノムDNAのメチル化レベルを測定できるという。

同研究グループは、この蛍光強度をスマートフォンで検出する方法を開発することで、在宅で誰でも簡単にがん診断が可能になることが期待されると説明している。

ゲノムのメチル化レベル測定法の原理。人工タンパク質がメチル化シトシンに結合すると、ルシフェラーゼの発光により蛍光物質が蛍光を発する (出所:東京工科大Webサイト)