芝浦工業大学(芝工大)は2月7日、分子インプリント高分子とカーボンペーストを利用して、血液中でも高い感度と再現性を示すヘパリンセンサを開発したと発表した。

同成果は、応用化学科の吉見靖男教授らによるもの。同技術については2月15日~17日にかけて大阪で開催される「メディカルジャパン 2017 大阪」にて紹介される予定だという。

ヘパリンは、血液の凝固を抑える薬で、人工心肺を用いる心臓切開手術では不可欠だが、薬の投与量が多すぎれば出血を起こすため、厳密な薬剤濃度の管理が求められていた。従来、血液凝固時間を計ってヘパリンの濃度の代わりにヘパリンの効き具合を判定する方法が採られていたが、その値でヘパリン投与量の過不足を判断することはできないという課題があった。

今回、研究グループでは、ラジカル重合で高分子の膜に目的物質の分子構造を記憶させる仕組みを採用したセンサとして、表面にラジカル重合開始剤を固定した直径8μmのカーボン粒子を反応液に浸して、よく混ぜながら光を当てて表面に高分子膜を形成する方法を開発したという。

また、各粒子表面にできる膜にバラつきが生じることを防ぐため、さらに油を加えてよく混ぜてペースト状にして表面を平らにすることで均質な電極を形成する方法を考案。実際に発生する電流を測定したところ、作られた電極はどれもヘパリンに対して同じ感度を示すことを確認したという。

さらにウシの血漿分離していない血液(全血中)でも安定した感度を示すことを確認。測定時間も30秒程度とリアルタイム計測が可能であることが示されており、血液中のヘパリン濃度を簡単に測定する使い捨て型のセンサとして期待できるものができたと研究グループでは説明している。

なお、この高分子は、構造を記憶させる分子を変えることでさまざまな物質をセンサのターゲットにできるとのことで、今後、抗菌剤や免疫抑制剤など、投与の際に厳密な管理が求められるさまざまな薬剤の血中濃度を簡便かつ迅速に測定できるセンサの開発を目指すとしている。

今回考案された均質電極形成技術のイメージ