広島大学と国立天文台(NAOJ)は1月31日、宇宙は遠方に行くほど、暗黒物質(ダークマター)の集中しているところで銀河の星形成が活発であるという傾向を捉えることに成功したと発表した。

同成果は、広島大学宇宙科学センター内海洋輔 特任助教らによるもの。詳細は、天文学誌「Astrophysical Journal」に掲載された。

今回、研究グループは、銀河が沢山集まっているところ、ほとんど何もないところといった銀河の分布(宇宙の泡構造)の中で、暗黒物質の集積の様子と、どのような銀河がどんな場所に存在するかを調べることを目的に、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC)」を用いて、かに座の「DLS領域」を撮像観測し、暗黒物質(ダークマター)の分布図を作成した。

また、銀河の赤方偏移の大きさを調べることで銀河までの距離を測定できることから、1万2000個の銀河の赤方偏移を測定し、これらのデータから銀河の3次元分布を作成。これらの2つの分布を比較した結果、互いの構造が似ていることを確認したという。

さらに、3次現分布を異なる赤方偏移に切り分けで、暗黒物質の分布図と比較したところ、近傍銀河団(30億光年先)ではその分布が暗黒物質の分布とあまり一致していないが、遠方銀河団(50億光年先)では暗黒物質の集積場所に対応する銀河が増えていることが判明。遠方にいくほど、暗黒物質の集中しているところで銀河の星形成が活発であるという傾向を捉えたとする。

銀河団領域の拡大写真。赤色のHSCの画像と米国のキットピーク国立天文台にあるメイオール(Mayall)望遠鏡の画像を合成したもの(R-bandが緑、V-bandが青)。等高線は質量分布を表しており、赤と青の丸はそれぞれ星形成をやめた銀河と星形成をしている銀河を表している (C)広島大学/国立天文台

今回の成果について研究グループでは、宇宙では過去に遡るほど、暗黒物質の集積と銀河における星形成に関連が深いことが判明したとしており、現在開発中のすばる望遠鏡次世代超広視野多天体分光装置「PFS」が完成すれば、より遠方の銀河を一度にたくさん分光することができるようになるため、HSCとPFSのデータを組み合わせることで、星形成活動がより活発だった時代の暗黒物質と星形成銀河の様子の解明が進むことが期待されるとコメントしている。

距離ごとにわけて銀河分布を調べた様子。地球から観測された銀河の3次元分布で、赤い点は星形成をやめた銀河を表し、青い点は星形成中の銀河を表している (C)広島大学/国立天文台