FRONTEOとFRONTEOヘルスケアは12月5日、NTT東日本関東病院との共同研究により開発を進めているFRONTEO独自開発の人工知能エンジンKIBIT(キビット)を搭載した「転倒転落予測システム」のベータ版が完成したと発表した。
KIBITは、人工知能関連技術のLandscapingと行動情報科学を組み合わせ、FRONTEOが独自開発した人工知能エンジン。テキストから文章の意味を読み取り、人の暗黙知や感覚を学ぶことで、人に代わって、判断や情報の選び方を再現することができるという。
今回発表した転倒転落予測システムは、2015年2月より開発を進めているもので、人工知能が電子カルテ内の自由記述のテキストデータを解析し、入院患者の転倒・転落の予兆を察知、発生件数を減少させて、医療における予測困難な有害事象の防止と、医師や看護師の負担軽減、病院の安全管理への寄与を目的とするもの。
FRONTEO、FRONTEOヘルスケア、NTT東日本関東病院の3者では、これまで蓄積された実際に転倒・転落した患者の記録の解析を通じて、電子カルテからどのような患者の記録を捉えると予兆を察知できるかの検証を重ねてきた。その結果、「意識障害」や「自立行動」に関連する患者が発した言葉(主訴)や看護師の所見に着目し、実際に転倒に繋がったケースやベテランの看護師から見て危険と感じる記述を、教師データとしてKIBITに学習させて解析を行うことで効果をあげてきたという。
これまでの検証により、従来の転倒リスクを評価する国際標準の予測手法「Morse Fall Scale(モース・フォール・スケール)」が実際に転倒した患者344人のうち195人(57%)を「リスクあり」と判別したのに比べ、「転倒転落予測システム」は、295人(86%)の患者を「リスクあり」と判別し、より高精度の結果が出たとしている。
今回完成した転倒転落予測システムのベータ版は、信号機に似た図柄で転倒転落の可能性を表示しており、可能性が高い患者は赤、低い患者は青で示され、直感的に状況を掴むことができる。
赤か青かの判定は、これまで培ってきた検証による成果に基づいており、現場の看護師は、自分たちが担当する患者一人ひとりの記録を読まなくても、「患者一覧」の表示で、担当箇所の患者のリスク状態を見ることが可能。さらに「個人表示」の画面から、患者がどういった理由でリスクが高いと判定されているか、電子カルテから抽出された表記や時系列での推移を確認できる。
今後は、NTT東日本関東病院で、蓄積されたデータを基にさらなる検証を進めるほか、臨床試験を行いながら、既存の電子カルテや表示システムとの接続、さらに看護師による使い勝手の検証を進めていくという。また、要望に応じ、同システムの導入に関心を持つ他の病院にも提供し、今年度中の医療現場での稼働を目指すとしている。