MNOはサブブランドで攻める

3大キャリアのうち、MVNOに最も積極的なのは業界最大手であるNTTドコモだ。ドコモは回線の貸し出し料金も他社の半分以下と安く、現在MVNOといえばドコモ回線を使っていると言い切ってしまっても、ほとんど問題ないほどだ。MNPでもドコモは基本的に転出する側であり、転出した先がライバル2社になるよりは、自社ネットワークを使うことで間接的にドコモの設備利用率を上げてくれるのであれば好都合ということだ。

一方、ドコモを追う立場のau、ソフトバンクの2社はMVNOにあまり積極的ではない。しかし両社とも回線の貸し出し料金はドコモより高く、MVNOは価格では勝負できない。auもソフトバンクも、MNPで転出されれば、先は多くの場合ドコモになるため、できるだけMVNOへの転出は避けたいと感じるのも無理はないだろう。

そこでauとソフトバンクが注力しているのが、MVNO的な低価格のサービスを提供するサブブランドの存在だ。auの場合は関連会社であるWiMAX2+サービスを展開するUQコミュニケーションズと、au回線を使ったMVNOである「KDDIバリューイネーブラ(KVE)」を合併させ、「UQモバイル」ブランドでのMVNOサービスを展開している。見かけ上は別会社だが、実質auの低価格ブランドとして扱われている。

ソフトバンクの場合は、1.7GHz帯でサービスを展開していたイーモバイル、2.5GHz帯でサービスを展開していたワイヤレスシティプランニング(旧ウィルコム)が合併した「ワイモバイル」を吸収合併。「ワイモバイル」のブランドだけ残し、低価格サービスを展開している。

UQモバイル、ワイモバイルに共通するのは、「MNO未満・MVNO以上」といった価格帯にサービスを投入し、MVNOへ流出する可能性の高いユーザーを手前で引き止める役割だ。3年前の型落ちとはいえ人気端末である「iPhone 5s」も導入し、MNOへ不満のある層を一定の割合で繋ぎ止めている。

UQモバイルは価格と価値のバランスをとった第3極を目指す

MNOの3社は長期利用ユーザーへの還元策などを打ち出しつつ、サブブランドで足元を固めるなどしてMVNOへの流出をできるだけ防ごうとしている(ドコモ自体はサブブランドを持たないが、格安端末「MONO」でSIMフリー端末への流出を防ごうとしている)。

MVNOの普及が始まって数年、MVNOはMNOにできないサービスと低価格を武器に、総務省などの施策も追い風としながら、ようやく「らしさ」を打ち出せるようになってきたが、全体としてMNOが圧倒的に支配的である状況はまだ変わらない。ユーザーがより安価に、より自由にネットワークを利用できるようになるよう、行政のさらなる施策などを期待したい。