大阪府立大学、東京大学などは11月26日、酸素の還元・発生という2つの電気化学反応に対して優れた触媒特性を示すマンガン(Mn)酸化物の合成に成功したと発表した。

同成果は、大阪府立大学 山田幾也テニュア・トラック講師、池野豪一テニュア・トラック講師、塚崎裕文研究員、森茂生教授、東京大学生産技術研究所 八木俊介准教授、高輝度光科学研究センター 河口彰吾研究員、冨士ダイス 和田光平氏らの研究グループによるもので、11月25日付けの独科学誌「Advanced Materials」オンライン版に掲載された。

次世代蓄電池のひとつである金属・空気二次電池では、放電・充電プロセスにおいてそれぞれ、酸素還元および酸素発生という酸素の電気化学反応が起こる。いずれの反応も触媒を用いることで高い効率でのエネルギー変換が可能となるが、現在利用されている触媒材料では、白金、イリジウム、ルテニウムなどの高価な貴金属元素を主成分としているうえ、酸素の還元反応と発生反応に対してそれぞれ有効な触媒材料が異なるため、通常は2種類以上の触媒材料が必要となる。

酸素還元反応に対して高い触媒作用を持つことが知られているマンガン酸化物は、酸素発生反応に対しては、ほとんど触媒作用を示さない。マンガンの酸化物に、酸素発生反応の触媒特性を付与することができれば、安価な二機能性触媒材料としての応用の可能性を見出すことができる。

そこで、同研究グループは今回、さまざまな構造を持つマンガン酸化物の触媒特性を調べ、四重ペロブスカイト酸化物の一種であるCaMn7O12とLaMn7O12が、酸素還元・発生のいずれの反応においても高い触媒性能を示すことを発見した。

酸素発生反応に対する高い触媒活性の起源を調べるために電子状態を理論的に解析したところ、従来型のペロブスカイトと四重ペロブスカイトで電子状態に大きな違いは見られなかったため、同研究グループは、大型放射光施設 SPring-8のBL02B2ビームラインで放射光X線回折データを収集し、リートベルト解析によって精密化した結晶構造に着目して反応メカニズムを検討した。

この結果、四重ペロブスカイトでは吸着物の酸素原子同士が近づくことによって、従来型のペロブスカイトでは起こらないタイプの反応メカニズムが生じている可能性があることがわかった。同研究グループは実際に、結晶構造中の隣り合うMn原子間の距離と触媒活性に強い相関があることを示し、結晶構造を変化させることで材料特性の劇的な向上が可能であることを実証したものとしている。

CaMn7O12は大気圧条件でも合成できることから、安価で大量に製造することができるため、今後さまざまな関連化合物の探索と合成手法の開発を進めることで、実用材料としての展開可能性を検証していく予定だという。

四重ペロブスカイトAMn7O12と従来型ペロブスカイトAMnO3の結晶構造(A = Ca, La)。四重ペロブスカイトではA’およびBの両方のサイトにMn原子が存在し、従来型ペロブスカイトとは異なる反応メカニズムを生じると推測される