イラスト : まずりん

鍼灸師・若林理砂さんが、あなたの近くにいそうなキャラたちの健康相談に答えるこの連載。シーズン1で登場した個性豊かな患者さんたちの「再診」で、現代を生きる人が陥りがちな、体と心の関係を探っていきます。

男性、30代、プログラマ
前回は腰痛はじめ体の痛みに悩んで来院。長時間座り続けていることが原因だったため、適度に姿勢を変えることを勧められました。今回はどうもそれとは違う理由のようで…?

本日の患者さんの悩み「多忙でストレスがたまる」

おや、再診ですね。どうなさいました?

「先生。腰痛はかなり良くなったんですよ。だけど、ストレスがひどくって」

そういえばなんだか目の下にクマが……なんですか、納期が迫ってるんですか?

「はい、そうなんです。僕が頑張らないと納期に間に合わないので、ここんところ終電帰りが続いていて。しばらくすると、たぶん会社に泊まったりすると思います」

ああ……なんなんでしょうね、あのゲームとかIT関係の納期付近って。うちの夫、ゲーム業界だったりするんですけど、どうしてこんなに納期ギリギリになると仕事が積みあがっちゃうの? って聞いたことあります。だって、納期は最初からわかってて、この時期にはここが仕上がってないとまずいってことは、事前にわかるわけじゃないですか。

「はい、ホントそうなんですよ。周りがみんな仕事できなくてですね!」

ふむふむ。

「だから僕が頑張らないと仕事が全然回らなくて!なのに、僕が出している指示もちっとも理解しないし、ほんと周りが無能で!!」

携帯食片手にプログラミング、ほんとに合理的?

おや、相当疲れてますね?ところで、食事とれてます?

「……カロリーメイトとかかじってます。あと、機能性食品のドリンクとかです……」

ところで、すっごい懐かしいゲームなんですけど、『Serialexperimentslain(シリアルエクスペリメンツ・レイン)』ってゲーム、知ってます?

「え、先生そんなのやってたんですか?」

やったやった。クリアしたもの。

アレに、ヒロインのレインが今のあなたと同じような感じの食事を無表情にかじりながら、プログラミングしてるシーンが出てくるんですよ。なんだ、ほんとにそうなんだ、プログラマさんって。

でも、こういう働き方をやっちゃうと、だんだんからだがおかしくなって、思考力も低下するから、イライラしやすくなるんですよ。まずはとりあえず、ちゃんとした食事をとるところから始めないとならないですね。

食べる手間を惜しむとハマる負のスパイラル

貧栄養かつ長時間労働が続くと、一人で考えつづけるサーキットにはまり込みやすくなります。それと、考える力が足りなくなるので、人とのコミュニケーションスキルもダダ下がりになるんですよ。何か伝えるとき、チャットだけで済ませたりしてませんか?

「はい、社内コミュニケーションはチャットかメールで……」

ノンバーバルコミュニケーションって知ってます? 顔の表情やしぐさで伝わる情報ってものすごく多いんですよ。だから、あなたの指示が伝わらないのって、その部分の情報が不足しているからかもしれないです。相手が無能なんじゃなくてね。

「そ、そうかな……」

仕事ってチームでやってるでしょ?あなた一人が抱え込んじゃうと、あなたが倒れたときに、他の誰にもわからない部分がたくさんできてしまって、ものすごく困ったりします。

「確かに、それはその通りですね」

一度、プロジェクトにかかわっているチームと顔を合わせて話してみたほうがいいですよ。変な誤解が生まれてるに違いないから。

「でも、用事もないのに、どうやって話しかけたらいいか……」

とりあえず、その時は栄養があるものを食べながら、ランチミーティングでもするといいんじゃないですか。あなたが貧栄養なら、たぶん回りもみんなそうだから。時間もないでしょうし、会社にデリバリーでもしてみてください。

お大事に、養生なさってくださいね!