鴻海とのシナジーは「物流」と「購買」で発揮

2016年度下期の営業利益増減分析の資料で、上期に比べて385億円もの大幅なコストダウン・モデルミックス改善の効果が挙げられていた。そのなかでも注目したいのが鴻海との協業効果による99億円という数字だ。その内容は「物流」と「購買」の協業効果だと戴社長は語った。

2016年度下期の鴻海協業効果は99億円と見積もっている

「物流を分社化し、鴻海の物流会社と協業する形にしました。今までのシャープの物流は専業ではなくいろいろな代理店を経由していたため、すごくコストが高かった。鴻海は全世界で最も大きいEMS(電子機器受託生産メーカー)ですから、部材などの調達のボリュームがすごく大きく、物流コストも低いです。白物と一部のテレビだけ協業しましたが、半年間ですでに20億円の削減ができました。これからディスプレイやソーラーなど、他の事業も含めて進めていきます」(戴社長)

「もう1つが『購買』です。今までのシャープは資金力が弱いため、おそらく(部材などの)ベンダーから有利な条件がいただけていませんでした。もし鴻海の購買と協業したら、そういう高負担を減らすことができます」(戴社長)

社内の不透明さを払拭し、有言実行の企業へ

戴社長が就任して初の決算発表会だったが、今回は中期経営計画の発表が見送られた。その理由について戴社長は「(就任してから)2か月半だけなので、ちょっと無理です。できればIoTなどいろいろな技術をしっかり統合して、来年4月頃に発表したい」と話していた。

その上で強く宣言したのが「有言実行」だった。戴社長は「今までのシャープはあくまでも『有言実行』ではありませんでした」と語る。

2015年7月には2015年度の通期予想を営業利益800億円と発表したが、10月には100億円へと修正。最終的には2559億円もの莫大な赤字を計上したことを指している。社長に就任して2か月半が経過した戴氏だが、そこにはシャープへの不信感が大きく表れていた。

「実際に(シャープの経営の内情が)分からない限り答えられませんから、できれば(中期経営計画の発表を)来年4月にやりたい」とのことだった。

4月に出資契約を結んでから最終的に出資が行われるまで約4カ月がかかったが、その間にシャープの調査を進めた戴社長は「1週間くらいで経営基本方針を作り、1日かけて説明しました」と語る。

「これから何か経営上の問題があればすべて私の責任だから、全部ブレークスルー(打破)したいと思っています。私が一番心配したのは、今までいろいろな責任者が結んだ契約の多くが不平等であることです。これから私が必ず責任を持って交渉に行きますが、私1人(鴻海の副総裁を辞任して)シャープの組織に入ります。シャープ(単体)の力はちょっと弱いので、世界最大のEMS(である鴻海)の力を得て解決したいと思っています」(戴社長)

「不平等契約」というのは、2016年3月期第3四半期連結会計期間(平成27年12月31日)の有価証券報告書「偶発債務」の項にも掲載された内容のことを指す。