東京大学(東大)は11月1日、抗がん剤のジェネリック医薬品の安全性に関する国際共同研究の結果、日米欧においてはその安全性に懸念は認められなかったと発表した。
同成果は、東京大学医科学研究所 井純正講師、米サウスカロライナ大学 チャールズ・ベネット教授らの研究グループによるもので、10月31日付けの米国科学誌「Lancet Oncology」に掲載された。
同研究グループは今回、抗がん剤のジェネリック医薬品の安全性情報に関して、世界の学術論文をはじめ、日米の規制当局で収集している公開情報も網羅的に収集し、解析を行った。
この結果、世界的に見ると、抗がん剤のジェネリック医薬品については、ドセタキセル、イマチニブ、シスプラチンに関する学術論文が多く認められ、日本においてはシスプラチンに関する学術論文および学会報告がジェネリック医薬品品質情報検討会で多く収集されていた。しかしいずれの報告も、過去に先発医薬品による治療を受けた症例とジェネリック医薬品による治療を受けた症例を後方視的に比較したもの、もしくは、先発医薬品による治療からジェネリック医薬品による治療にスイッチした症例の後方視的解析であった。
これらの報告を解析した結果、日米欧においては、抗がん剤のジェネリック医薬品の安全性に関して、明確な懸念につながるようなデータは得られなかった。特に、日本からの報告が多かったシスプラチンに関しては、ジェネリック医薬品品質情報検討会で品質の確認が行われ、製剤間で不純物量に大きな差はないことが報告されていた。
このように、ジェネリック医薬品品質情報検討会では、市販後に学会発表などを情報収集し、そのなかから注目すべき品目について品質確認を行う取り組みがなされていた。その一方で、発展途上国においては、ドセタキセルにおいて製剤間の不純物量に大きな差を認める報告がなされているなど、製造工程等に由来する安全性上の懸念が認められた。
今回の研究から、ジェネリック医薬品の安全性情報が豊富ではない現状において、日本におけるジェネリック医薬品の市販後のデータ収集の取組みはユニークで重要なものであることがわかったため、同研究グループは、今後、ジェネリック医薬品の安全性確保に資するデータ創出について日本が主導的役割を果たしていくことが期待されると説明している。