大阪市立大学(大阪市大)などは10月17日、原因不明の疾患である慢性疲労症候群患者の血漿成分中に特徴的な代謝物質が存在することをメタボローム解析により明らかにしたと発表した。

同成果は、大阪市立大学医学研究科システム神経科学 山野恵美特任助教、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター 渡辺恭良センター長、片岡洋祐チームリーダー、関西福祉科学大学健康福祉学部 倉恒弘彦教授、慶應義塾大学先端生命科学研究所らの研究グループによるもので、10月11日付の英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

慢性疲労症候群(CFS:Chronic Fatigue Syndrome)は原因不明の強度の疲労・倦怠感により半年以上も健全な社会生活が過ごせなくなる病気で、通常の診断や従来の医学検査では特徴的な身体的異常を見つけることができず、治療法も確立していない。原因として、ウイルスや細菌の感染、過度のストレスなどの複合的な要因が引き金となり、神経系・免疫系・内分泌代謝系の変調が生じて、脳や神経系が機能障害を起こすためと考えられているが、発症の詳細なメカニズムは明らかになっていない。

今回の臨床研究は、CFS 患者に特徴的な代謝物質を発見するための試験1と、その結果の妥当性を確認するための試験2に分けて実施され、それぞれの試験で異なる被験者を対象に行われた。

具体的には、試験1ではCFS患者47名と健常者46名、試験2ではCFS患者20名と健常者20名の被験者から、それぞれ血漿サンプルを採取し、キャピラリ―電気泳動質量分析計を用いて網羅的メタボローム解析を実施。試験1の結果、解糖系のピルビン酸、TCA回路前半のクエン酸やイソクエン酸、尿素回路のオルニチンやシトルリンにおいて、CFS患者群と健常者群との間に濃度の違いが観察された。これにより、CFS患者群では、解糖系からTCA回路への流入、TCA回路前半および尿素回路において代謝機能が低下していることが推測される。

次に、測定された代謝物質を用いてコンピューターを使用したパターン識別手法による解析を行ったところ、CFS患者群と健常者群を判別するうえでイソクエン酸、ピルビン酸、オルニチン、シトルリンが有効な代謝物質であることが示された。これは、長期的な疲労病態を反映して、解糖系からTCA 回路流入の機能低下(ピルビン酸濃度の上昇とイソクエン酸濃度の低下)と、尿素回路の機能低下(オルニチン濃度の上昇とシトルリン濃度の低下)が特に顕著に起こったためと考えられる。

そこで、試験1および試験2において、ピルビン酸/イソクエン酸、オルニチン/シトルリンという2つの代謝物質比を代謝物質比をCFS患者群、健常者群で比較したところ、いずれもCFS患者群のほうが有意に高いことが確認された。

また、2つの代謝物質比がどの程度正確な診断指標となるかを検証するため、2つの代謝物質比を用いた多変量解析モデルを作成し評価した結果、2つの代謝物質比を組み合わせた指標は高精度でCFS 患者群と健常者群を判別することが可能であり、CFSの客観的な診断に有効なバイオマーカーとなりうることが示された。

同研究グループは今後、代謝物質の比によるCFS患者群と健常者群の判別が、異なる背景(人種など)をもつ集団にも適用しうるか検討していくとしている。

メタボローム解析により定量化された代謝物質の経路図(一部抜粋、図中のCFSはCFS患者群、HCは健常者群)