ラジオ業界で画期的な取り組みが始まる。インターネットでラジオが聴けるサービス「ラジコ」が、過去1週間分の番組をさかのぼって聴ける「タイムフリー聴取」に対応するのだ。リスナーの減少にともない、広告市場も縮小を続けるラジオ業界だが、今回の新サービスは起死回生の策となるのだろうか。

radikoが画期的な新サービスを開始

月間ユニークユーザー1,200万人のネットラジオ

ラジコはPCやスマートフォンを通じ、現在放送しているラジオ番組をネット経由で聴けるサービスだ。基本的にはラジコを起動している(リスナーが今いる)地域の放送しか聴けないが、月額350円(税別)で「ラジコプレミアム」に加入すれば、全国のラジオ放送を聴くことができる。ラジコのスタートは2010年3月で、月間ユニークユーザー数は2016年8月時点で約1,200万人(デイリー平均は約100万人)。ラジコプレミアム会員は約30万人となっている。

ラジコを運営するradikoには、電通のほかTBSラジオやエフエム東京といった多数のラジオ局が出資している。ラジコで聴けるのは、民放ラジオ局と放送大学を合わせた計81局だ。ラジコが始まった背景には、ラジオ聴取機会を拡大したいというラジオ業界共通の想いがあった。

深夜ラジオが昼間に聴ける新サービス

タイムフリー聴取とは、ほぼ全てのラジオ番組を、放送後1週間に限り、いつでも後から聴けるというサービスだ。テレビには全ての番組を一定期間にわたり録画できる“全録”レコーダーが存在するが、ラジコのタイムフリー聴取は、このレコーダーをラジオ放送局側が公式に用意するようなイメージだ。タイムフリー聴取の使い方としては、例えば朝の通勤時間に、前日の深夜番組を聴いたり、聴き逃した早朝のニュース番組を聴いたりすることが可能になる。

ラジコがタイムフリー聴取に対応することで、ラジオはどう変わるのか。まず考えられるのは、ラジオ聴取者が大きく拡大することだ。

ラジコの登場により、ラジオはいつでも、どこでも聴けるメディアへと進化した。しかし、ラジコがラジオ本放送との同時(サイマル)放送であったため、ラジコを起動できる状況にある人でも、聴きたい番組がないのでラジオを聴いていないケースはあったと想像できる。タイムフリー聴取が始まれば、ラジコでは過去1週間のラジオ番組から好きなものを選んで聴くことが可能になる。例えば移動時間に何を聞くか考える時、過去1週間分のラジオ番組を選べるラジコは魅力的な選択肢になりうる。

タイムフリー対応と同時に、ラジオ業界は新たな聴取スタイルとして「シェアラジオ」を提唱する。これにより、“ラジオ離れ”が深刻化しているといわれる若年層に、ラジオの面白さを訴求する考えのようだ。シェアラジオとはどんなものだろうか。