ハイエンド・コンパクトモデルは絶滅する?

ではなぜ、Xperia X Compactが従来のハイエンドではなく、ミドルクラスのモデルとなったのだろうか。そこにはスマートフォン、ひいてはコンパクトモデルを取り巻く状況が、大きく変化していることが影響している。

先にも触れた通り、特に日本ではこれまで、コンパクトモデルにも高い性能が求められる傾向が強かった。それはスマートフォンが進化の過程にあり、高性能なモデルでないと快適な使い勝手が得られなかったが故でもある。しかしながら現状、スマートフォンの進化は停滞傾向にあり、ミドルクラスの性能の機種であっても十分な使い勝手を実現する機種が増えている。それゆえユーザー側もメーカー側も、ともにハイエンドにこだわる必要がなくなってきているのも事実だ。

またそもそも、コンパクト・ハイエンドを求めるユーザーが多い国自体が減少しており、ある意味そうした性能を求める国が日本だけになりつつあることも、コンパクトモデルの変化には大きく影響してきているといえよう。ソニーモバイルも現在は2014年の経営不振から再建を進めている最中であり、日本市場だけに対応するのは難しく、世界的に広く売れる"売れ筋"モデルだけを提供するようになってきている。それゆえXperia X Compactは、日本以外でもニーズが見込める、ミドルクラスの性能に落ち着いたといえそうだ。

コンパクトモデル自体は、手頃なサイズ感や大画面モデルにはない個性があることなどから、日本だけでなく欧州などでも根強いニーズがあり、完全になくなってしまうとは当面考えにくい。ソニーモバイル側も、ニーズがある限りコンパクトモデルは継続的に提供していくと話しているし、欧州でXperia X Compactを販売しているのも、市場ニーズがあるからこそだといえる。

Xperia X Compactは欧州ではIFA開催の翌週に発売されており、日本だけでなく欧州でも人気があることをうかがわせている

だが現状の流れを見るに、日本でニーズの高いコンパクト・ハイエンドモデルは、世界的な市場の縮小とともに、今後姿を消してしまう可能性が高まっているのは確かである。そしてコンパクトモデルがミドル・ローエンドのみとなってしまうことで国内での人気が落ち、コンパクトモデルの絶滅につながってしまうことが、最も危惧されるところだ。