ネットワークの強化で実現

同社はこれまで基地局の数を増やしてネットワークの強化に努めてきた。しかし、都市部において基地局は過密状態にあり、極端なところでは10m感覚で基地局が設置されているところもあるという。これ以上の基地局の設置は電波干渉などを起こしうることからも困難であり、1基地局あたりの容量を増やすことが必要になっている。

従来のネットワークの強化では限界が見えていると説明する

そこで、ソフトバンクは今回のデータプランの発表にあたり、「Massive MIMO」という技術を導入した。これは1基地局当たりのネットワーク容量を最大10倍に増やせる技術。イメージとしては、通常の基地局では複数人で1つの電波を利用していたのに対し、Massive MIMOでは各人に電波を割り当ててることで、混雑した場所でも快適な通信が可能になるという。Massive MIMOはiPhone 7の発売当日、9月16日より全国43都市100局より開始することになる。スタート時の数は少ないが、こうしたネットワークの余裕が見えたことで、今回のデータプランができたというわけだ。

Massive MIMOはアンテナ数を最大128本搭載。ユーザー各人に専用の電波を割り当てるという

今回のデータプランは、他社との大きな差別化になりそうだ。もちろん、それは他社が追随しなかった場合である。そのあたりについてソフトバンクネットワーク企画統括部 統括部長 北原 秀文氏は「Massive MIMOはソフトバンクが商用化した世界初の事例。他社ももちろん、実用化に向けた実験を進めているが、うちが複数年先を行っている」と話す。それが事実であれば、今回の取り組みはヘビーユーザーを取り込む大きな武器になりそうだ。

学割ユーザーへの配慮も必要

ただし、懸念されることもある。それは学割キャンペーンだ。学割キャンペーンは、動画などの通信量を大きく消費する若い世代のニーズを汲み取り、今年1月に大手各社が打ち出した施策だ。ソフトバンクでは、「ギガ学割」と命名し、25歳以下の人を対象に、6GBを36カ月、計216GBをプレゼントするキャンペーンを展開してきた(新規・乗り換えの場合はホワイトプラン3年間0円の選択肢も)。

5月末まで行われた「ギガ割」の特典(新規・乗り換えの場合)

こうしたキャンペーンを目当てにソフトバンクを利用し続けてきた人にとっては、今回のデータプランが腑に落ちないかもしれない。データを多く使うのは、若者であり、ターゲットは学割もギガモンスターも同じ。今回のデータプランがはじめから存在していたならば、「そもそも学割は利用しなかった」「データの付与ではなく基本料金割引を選択していた」という人がいてもおかしくないからだ。その点に関して、ソフトバンクは、ギガ学割の利用者に対して「どうするか検討中」としている。ギガモンスターを進めるにあたり、ユーザーの不平不満を生まないような配慮も必要になるだろう。