順天堂大学は8月1日、太っていなくても生活習慣病(代謝異常)になる人の原因として骨格筋の質の低下(インスリン抵抗性)が重要である可能性を明らかにしたと発表した。

同成果は、順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史准教授、河盛隆造特任教授、綿田裕孝教授らの研究グループによるもので、7月6日付の米国科学誌「Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」オンライン版に掲載された。

生活習慣病に関する研究は、主に肥満者を対象に行われているが、アジア人においては、生活習慣病になる患者の多くは体格指数(BMI)が25kg/m2未満の非肥満者である。これまでに、非肥満者でも肝臓や骨格筋といったインスリンが作用する臓器に脂肪が蓄積するとインスリン抵抗性が生じることや、アジア人では痩せていても脂肪肝になりやすいことなどがわかってきているが、日本人におけるその詳細は不明だった。

そこで今回、同研究グループは、BMIが23~25kg/m2で高血糖、脂質異常症、高血圧といった心血管代謝リスク因子を持っていない者28名、ひとつ持っている者28名、2つ以上持っている者14名の計70名の日本人を対象に調査を実施。このほかに、BMIが21~23kg/m2で心血管代謝リスク因子を持たない者24名(正常群)、肥満(BMIが25~27.5kg/m2、国内基準)でメタボリックシンドロームを合併する者14名(肥満MS群)の測定も行った。

この結果、BMIが23~25kg/m2で心血管代謝リスク因子を持っていない人は、正常群と同等のインスリン感受性だったが、心血管代謝リスク因子をひとつでも持っていると骨格筋のインスリン抵抗性が認められ、そのレベルは肥満MS群と同等となった。一方、肝臓でのインスリン抵抗性においては、そのような関係は認められなかった。

また、どのような因子が骨格筋のインスリン抵抗性と関連しているかを調査したところ、従来肥満者で指摘されてきたような内臓脂肪が多いことや、脂肪細胞から分泌されるホルモンであるアディポネクチンの血中濃度が低いことに加えて、体力が低い、生活活動量が低い、脂肪摂取量が多いなどといった生活習慣に関連した因子もあげられた。さらに、脂肪肝と判定されないような肝脂肪の軽度蓄積や正常範囲内での肝機能検査の軽度上昇であっても、骨格筋インスリン抵抗性と有意に関連する因子であることが明らかになった。

以上の調査から、日本人で太っていなくても心血管代謝リスクを合併する人では、骨格筋インスリン抵抗性が病態として重要である可能性が明らかになったといえる。また、脂肪肝や軽度の肝機能異常は骨格筋のインスリン抵抗性を知る簡便なマーカーとして有用と考えられ、今後、健康診断をはじめとした予防医学での活用が期待されるという。

BMIが23~25kg/m2で心血管代謝リスク因子を持っていない人は、正常群と同等のインスリン感受性だったが、リスクをひとつでも持っていると骨格筋のインスリン抵抗性が認められ、そのレベルは肥満MS群と同等となった