人の心を理解する相棒

では、研究開発が進んだ場合に、どのようなやり取りが可能となるのか。その姿は、ホンダが21日に公表したイメージビデオに詳しい。

イメージビデオにはナディアと呼ばれる女性、そしてAIのベンジャミンが登場する。ナディアが車に乗り込み、「ベンジャミン」と呼びかけると、ベンジャミンは「こんにちわ。ナディア」と返す。ナディアは「こんな晴れた日にふさわしいごきげんなBGMをよろしく」とベンジャミンにお願いをする。ベンジャミンが流した曲はヴィヴァルディの「春」。ナディアはなんだかしっくりこない様子を見せると、ベンジャミンは「お気に召しませんか?」と返す。

対話型のAIを想定する

最初はナディアの趣味嗜好を判断できず、ベンジャミンは少し不器用な存在として描かれる。しかし、過ごした時間とともにベンジャミンは変わっていく。

ナディアは自立心が強い人だとベンジャミンは理解しており、彼女から求められるまでは助言や忠告は控えめにしたほうがいいと認識するのだ。車庫入れにナディアが苦心していても、やんわりとしかアドバイスをしない。そのほうがナディアの機嫌を損ねないことを理解しているからだ。

ナディアと出会った47日後にはベンジャミンは彼女の性格を理解している

後日、ナディアはある男性とのデートに向かう。おしゃれをしたナディアはベンジャミンに「似合うかしら」と問う。すると、ベンジャミンと「とってもお似合いですが、本日は夕方から冷え込むので、もう少し暖かいお召し物の方が……」とアドバイスをする。ナディアは「ベンジャミン、おしゃれは"我慢から"なのよ」と反論する。

このイメージビデオからわかるのは、AIがドライバーのことを理解し、どのようなアドバイスが効果的かをAIが判断していることだ。そして、車載センサーやカメラをもとに、車庫入れの状況も把握する。さらに、インターネットから、天気や気温などの情報を取り入れる。一方で、ナディアはベンジャミンのアドバイスに反論し、自分の価値観を教え込む。ベンジャミンを単なるAIではなく、人間に近い存在だと捉えるような雰囲気で描かれている。

こうしたシーンを見ていくと、米国のドラマ「ナイトライダー」で描かれたドリームカー「ナイト2000」を想像するかもしれない。イメージとしてはそれに近いものと考えてよさそうだ。自動運転モードを利用しながら、AIが人と対話し、ドライバーが暇そうにしていたら、ポーカーゲームだってやってくれる。相棒、友人、そのような存在なのだ。