シリコンバレーのテクノロジー企業が共通して関心を寄せているのが、自動車に関する技術だ。自動運転と並んで、タクシー配車アプリ、ライドシェアリングアプリが注目を集めており、「新しい街の交通システム」を担う可能性が試されている。

その中でも最も活発に活動しているのがグーグルだ。グーグルは独自のタクシー配車アプリを準備していると言われているが、その一方でUberへの投資を行っている。またアップルは中国の滴滴出行に出資しており、ソフトバンクもインドOLAへの投資を行っている。楽天はUberの競合となるLyftに出資している。

テック企業の投資の狙いは何か。そしてテック企業が作り出す「移動の未来」とはどのような姿になるのだろうか。

グーグル、アップル、ソフトバンク、楽天など名だたるテック企業が配車アプリに投資するのはなぜか(写真:PIXTA)

不況とモバイルとのマリアージュ

UberやLyftは、「ライドシェアリングアプリ」に分類される。厳密にはタクシー配車アプリではない。ライドシェアとは、営業運転を行うタクシーと異なり、自家用車の相乗りのためのマッチングを行うためのサービスだ。

車を運転している人と、近辺で移動したい人をリアルタイムでマッチングさせる仕組み、アプリ内で支払いを済ませられる決済システム、顧客やドライバーを相互評価する仕組みが用意されている。

Lyftウェブサイト。スマートフォンからリクエストを送信。乗車、支払いの3ステップとシンプル

これは、スマートフォンが普及した世界でのみ、成立するシステムだったと言える。ドライバーとユーザーの位置をGPSで共有しており、乗りたい人が現れた際、近辺のドライバーに通知して、リクエストに応えられる人を見つける。

そして、ドライバーを客のところまで誘導している間に、顧客は目的地を地図で設定し、ドライバーのアプリのナビを自動的に設定する。目的地まで到着すれば、顧客は車を降りるだけだ。あらかじめ設定してあるクレジットカード、もしくはApple Payなどのモバイル決済で、支払いを済ませることができる。

手が空いている車とドライバーを、移動したい人とマッチングさせる、街の遊休資源の有効活用のアイデア。裏を返せば、車を持っている失業者がいなければドライバーのなり手がいなかったわけで、2008年のリセッション以降の「不況ビジネス」の1つと位置付けることもできよう。時を同じくして、スマートフォンの普及と技術的な向上が起こり、スマホの普及と活用の深化によって実現している。