スマートデバイスのセキュリティアプリ・サービスを提供する米Lookoutは6月8日、米Microsoftとパートナーシップを提携したことを発表した。これに伴い、Lookoutの法人向けのモバイルセキュリティ対策ソリューション「Mobile Threat Protection」とMicrosoftのモバイル環境管理ソリューション「Enterprise Mobility Suite」を統合する。

ルックアウト・ジャパンの執行役社長を務める大須賀雅憲氏は、今回の提携が実現した背景について、「両社において、企業のモバイルデバイス活用を進めたいという目標が一致したから」と話す。

ルックアウト・ジャパン 執行役社長 大須賀雅憲氏

Microsoftでは、Satya Nadella氏が2014年にCEOに就任した際、「Mobile first, Cloud first」という戦略を打ち出し、企業のモバイルデバイス活用を進めて製品をそろえてきた。そうした中、企業がモバイルデバイスを活用するうえでセキュリティを最大の懸念事項と見なしていることから、モバイル分野におけるセキュリティをより強化することにしたという。

一方、Lookoutが提供するコンシューマー向けアプリはグローバルで1億以上の端末で利用されており、これらのアプリから収集したデータはデータベースに蓄積されている。同社はこのデータベースをもとに複雑な相関関係を解析することで、将来のリスクを予測し、従来のシステムでは検知できないような新たな脅威をいち早く特定することを実現している。こうしたLookoutのデータベースに基づくインテリジェンスは、今回の提携により、マイクロソフトに提供される。

加えて、Lookoutは昨年、企業におけるモバイルデバイス活用の促進すべく、企業向けモバイルセキュリティクラウドソリューション「Lookout Mobile Threat Protection」を日本市場で販売を開始した。

Lookoutは法人向けビジネスにおいてNTTドコモと提携しているが、販売におけるパートナーとしての位置づけとなる。これに対し、マイクロソフトとLookoutは共同で製品開発を行うとともに、マイクロソフトはLookoutに出資するということで、より深い関係と言える。

大須賀氏によると、両社の製品を連携させる製品は、数カ月後にEMSのオプションとして提供が開始される予定だという。企業はこのオプションを利用することで、クラウドやオンプレミスのアプリケーションへのアクセスの管理や保護、端末内のデータを選択して消去することが可能になる。

また、新ソリューションの提供に合わせ、導入を検討している企業を対象に「ベータプログラム」の募集も世界で開始されるそうだ。

大須賀氏に「モバイルデバイスの脅威とは何か」と尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。

「まずは、アプリの脅威が考えられる。広く普及しているアプリほど便利だが、その反面、リスクが高い。また、無償のWi-Fiを利用することによるネットワーク上の脅威もある。さらに、企業がモバイルアプリを導入する際、悪質なコードを持ったアプリを採用してしまうおそれもある。一度、不正なアプリが入り込んでしまうと、取り除くことは難しい。しかし、こうしたリスクが存在するからといって、モバイルデバイスを利用しないがために、業務の効率化を妨げていることこそ、企業にとって最大の問題と考えられる」

さらに、地震などの災害が多い日本においては、「BCPという観点からも企業はモバイルデバイスの活用を進めるべき」と大須賀氏は指摘する。

業務の効率化に加え、柔軟な働き方の実現など、さまざまな要因から、企業はモバイルデバイスの活用を迫られている。こうした中、両社が提供するソリューションは企業にとって一助となるだろう。