また田端氏は、このレリバンシーに加えて、システムがユーザーの興味関心に応じて広告配信を自動的に最適化し、必要な期間に必要な量の広告を配信できるダイナミックな広告取引を実現するという概念である「PROGRAMATIC」という方向にシフトしていくと説明。2月にはアドテクノロジー企業であるM.T. Burnに出資と業務提携を行い、6月には新たな広告システムによる広告配信を開始するという。

なお、こうした説明の最後に田端氏はユーザーのプライバシー保護についても言及。

「我々はLINEが個人間のダイレクトなコミュニケーションの基盤であることを強く肝に銘じている。LINEが広告配信のためにユーザー間のコミュニケーションを参照するということはあり得ない。ユーザーの電話番号、電子メール、コンタクト情報をビジネスパートナーに引き渡すといったことも決してやってはいけない。今や社会の通信インフラの一部となっているという立場を自覚しながら、広告ビジネスを推進していきたい」と田端氏は語り、本人特定性を担保するような情報や高い機密性が求められるコミュニケーション履歴などについては保護するという同社の基本方針を強調した。

ユーザーのプライバシーは広告においても厳格に保護される

スタンプクリエイターと広告主企業との間にエコシステムを生み出す

最後に田端氏は、LINEにおける広告タッチポイントの今後について説明した。田端氏の説明によると、既にLINEアプリの月間ユーザー数は、TwitterやFacebookを大きく上回っており十分な広告リーチを確保しているが、このタッチポイントを今後はさらに増やしていくという。具体的には月間2200万人が利用しているLINEニュースや、LINEアプリの中で利用する頻度が多いアカウント情報のページ、そして人気タイトルを多数展開しているLINEゲームなどにおいても、PROGRAMATICを採用した新しい広告システムの広告掲載面として展開していくという。

加えて田端氏は、これまで価格が2000万円から4000万円と高価だったスポンサードスタンプについて、中小企業やローカルビジネスでも展開できるようにするという。具体的には、「LINE Creators Market」に登録している54万人以上のスタンプクリエイターを活用。ここで一般発売されているスタンプの配信権利を企業がクリエイターから買い上げ、自社のLINE公式アカウントなどで特典スタンプとして配信できるようにする。これによって企業は安価でスタンプをマーケティングに活用することができ、一方クリエイターにとってはスタンプの新たな収入機会が生まれるのだという。

ユーザーリーチや中小企業でも活用できる広告サービスを拡充する

次はBtoCのコミュニケーションが変わる番だ

こうした説明の締めくくりとして、田端氏は「LINE AD Platform for everyone」というメッセージを掲げ、「これまで主に大企業(による利用)が中心だった広告メディアとしてのLINEを、リーチの拡大、広告をユーザーにとって意味のあるものにするためのレリバンシー評価、柔軟な広告システムによって、中小企業を含むあらゆる企業・ブランドと消費者とのコミュニケーションをよりスムーズにする基盤として進化していきたい」と語った。

LINEはこの5年でCtoC(個人間)のコミュニケーションを大きく変えてきた。田端氏は、「次はBtoCのコミュニケーションが変わる番だ」と意気込みを語る。

「これまで、広告は無料メディアを支えるための“必要悪”だと思われてきたが、LINEはそうは考えていない。ユーザーと広告のレリバンシー=見たいもの、興味がありそうなもの、アクションを起こしたいもの、役に立ちそうなもの、楽しめそうなもの、そうしたものを広告に盛り込むことを追求する。そして、“必要悪”だと思われてきた古い広告へのイメージをぶち壊し、新しい広告観を生み出していきたい」(田端氏)