ドル高が圧迫する収益

決算発表では、収益の圧迫要因としてドル高も指摘された。iPadやMacの販売台数も減少しているが、米国外では、販売価格の上昇が少なからず関係しているのではないだろうか。

Appleは世界で販売価格の整合性を取っている関係上、ドル高になれば他国での販売価格は値上げされ、販売台数を圧迫する。販売価格を変えなかった場合でも、ドルで評価すれば目減りすることになる。既に米国外の売上が約6割に上るAppleにとっては無視できない影響だ。

折しも、日本銀行は、欧州中央銀行に並んで、マイナス金利を打ち出した。表向きは国内・域内のお金の流れを刺激するとのことだったが、結果的には通貨安競争の手段であり、中国も含めて、今後さらに自国通貨安への誘導が顕著になることも考えられる。

一方の米国の連邦準備制度理事会は、2015年末から利上げを行っており、各国が政策を維持するのであれば、金利差からドル高に動く傾向が強まるだろう。つまり、2016年以降、Appleの世界でのビジネス環境は厳しさが増すことが考えられる。

ちなみに、1ドル100円程度から123円まで、20%以上ドル高となった日本における2016年度第1四半期の収益は、前年同期比で12%減だった。

米国のApple製品の魅力にも陰り?

地域別の売上も見てみよう。欧州で微増、中国では10%を超える成長、日本は前述の通り14%の減少、米国市場は4%の減少となったが、このように地域に目を向けると別の要因も見えてくる。

米国市場は前年同期比で4%減と奮わず。日本も同様に前年同期比14%減だった(Appleの決算資料)

米国で最も購買が盛んになるホリデーシーズンである第1四半期において、やはり前年度の大画面化を受けたiPhoneの成長の反動と見ることもできるが、既に足下の市場でマイナス成長が始まっているとすると、iPadやMacの下落も含め、あまり穏やかではない。

Appleは製品以外の各種サービスも強化しているが、本質はハードウェアメーカーであり、製品の魅力が売上を左右する。つまり、主力製品群の魅力が、米国において失われつつある可能性を指摘せざるを得ない状況になってきたかもしれない。

iPhoneは2年に1度のデザイン変更、iPadやMacに至っては平気で3~5年はそのままのデザインを維持する。これは、普遍性あるデザインを採用していることの裏返しでもあるが、1年ごとのプロセッサ性能の向上がほぼ唯一のスペック面での進化だと考えると、だんだん売れなくなっていくのは頷ける。

こうした背景から、Appleは2016年に、製品ラインアップに大幅なテコ入れを行っていくことが考えられる。ちょうどiPhoneについても、2年ごとのデザイン刷新の年であり、これも含めて、様々な製品に対して、魅力を高める改善や、新製品の追加が行われていくだろう。