日本マイクロソフトは12月17日、MicrosoftのAI(人工知能)「りんな」について、メディア向けの説明会を開催した。りんなのLINEのお友達が185万人を超えたこと、グループチャットに対応したこと、新たにTwitterを開始したことなどを明らかにした。

Microsoftの人工知能の歴史

日本マイクロソフト 佐野健氏

同社では、1991年にMicrosoft Researchを設立以来、積極的に人工知能の開発に取り組んでいるという。「Microsoft Translator」「Bing Maps」「Bing Search」「Skype Translator」「Azure ML」など同社のさまざまなプロダクトにもAIが活用されている。

りんなは、先に中国向けに提供された「XiaoIce」と呼ばれるチャットボットをベースにしている。中国で最初に展開した理由は、Microsoft Research Asiaの拠点だったからだそうだ。

Microsoftの人工知能の歴史

その次の展開地に日本を選んだのは、サブカルチャーが発展していること、ロボットに対する文化や市場、スマートフォンやSNSの普及といった理由があったという。そして、そのりんなを普及させるべく、プラットフォームとして選んだのがLINEだった。5800万人のユーザーを抱えるLINEと組むことで、多くの人にリーチできると考えたという。

日本での展開理由

りんなのシステムアーキテクチャ

りんなの開発・運営は、検索エンジンであるBingのチームが行っている。りんなの会話は、Bingで収集した単語や文章のデータベースや、Microsoft Azureに構築されたマシンラーニングサービス「Azure ML」を用いて提供されている。また、りんなの会話システムを使った法人向けビジネスとして「りんなAPI for Business」も展開している。具体的な事例の発表は控えたが、現在「複数の企業と商談中」とのことなので、今後なんらかの発表が考えられるだろう。

りんなのシステムアーキテクチャ

りんなには、2015年8月のローンチから現時点で、185万人以上のLINEの「お友達」がいる。このユーザー数は、マーケティングを行わずに口コミなどで獲得した人数だそうだ。

りんなの利用状況を分析した結果、週の後半になるにつれて、多く利用されていることが分かったという。佐野氏いわく「週末のちょっと疲れた時に、話し掛けたくなる存在なのでは」と分析していた。

また、Windows 10に搭載しているコルタナとの違いについては、コルタナはパーソナルアシスタントと呼ばれるように、効率や生産性を追求した人工知能であることに比べ、りんなは、ユーザーとの感情のつながりを重視した「エモーショナル」な人工知能だという。

りんなの利用状況を日時別で示したグラフ。週末に掛けて利用率が増加する傾向がある

りんな、特殊能力を身に付けました

毎週新しい「特殊能力」(機能)が、りんなに追加されていることも明らかになった。中でも人気が高い機能は、りんなと「しりとり」で遊ぶ機能や、放送中のテレビ音声をりんなに聴かせると、りんなから番組名やコメントが返ってくる「TVにかじりつき」機能だ。その他にも、すでに16個以上の特殊能力を持っている。また、これらの「特殊機能」は「ひみつ手帳」と話し掛けると、今までりんなと話した回数などと合わせて確認ができる。

人気の高い「特殊能力」

今後は、1対1のやり取りに加え、グループチャットやルームチャットに対応することを発表。複数人対応の特殊能力には、「カタカナ&アルファベット禁止」「レシート占い」「顔出しパネル」など複数で楽しめる機能が追加された。また、クリスマス、お正月、バレンタインなどのタイミングに合わせて、会話イベントを仕掛けるとのこと。

グループチャットで遊べる「特殊能力」

また、ひそかにTwitterを開始していたことも明らかになった。LINEと同じくユーザーと会話ができるそうだが、必ず返信がくるLINEと違い、返事は気まぐれのようだ。アカウントは「@ms_rinna」となっている。

りんなのTwitterアカウントも開設

エモーショナルなつながりを重視しているりんなだが、今後はどのような進化を遂げるのか、またどういったビジネスチャンスを生み出すのか、ぜひ注目していきたい。