「宇宙には行き止まりがあるの?」「葉はどうして秋にだけ落ちるの?」――幼いころ、身のまわりにある素朴な疑問に考えを巡らせた経験は、だれにでもあるのではないでしょうか。しかし、素朴な疑問であればあるほど、正しく答えることは難しく、科学的に実証された答えがないこともしばしばです。もしあなたがそのような質問をされた場合、どのように答えますか?
本書では、イギリスの子どもたちが投げかけた131個の素朴な疑問に対して、111人の世界の第一人者たちが答えていきます。寄せられた質問は、答えの限定される科学的な問いから、いくつもの答えが考えられる哲学的な問いまでさまざまです。小中学生が理解できるわかりやすい文章で書かれているため、大人は気楽に楽しむことができますが、本書の楽しみかたは、問いに対する「答え」を知ることだけではありません。問いへの「答えかた」について一緒に考えられるところが、本書の最大の魅力です。
ここでは実際に、ものごとを「わかりやすく」「正しく」伝えることを生業にしてきた著者の立場から、子どもたちの131個の疑問のうち3つを厳選し、答えていきたいと思います。
1. オーロラはどうやってできる?
オーロラとは、大気が緑色や赤色、青色に光る現象であり、ノルウェーのような北極(あるいは南極)に近い場所の地上100~1000kmで観測されます。オーロラという言葉そのものは有名ですが、大気が発光する原因やオーロラの発生源に関しては、広く知られているとは言えません。一体、オーロラはどのようにできるのでしょうか?
答えを先にお伝えすると、オーロラが発生する原因は「太陽」であり、オーロラの発光源は、大気中を縦横無尽に飛びまわる「粒子(酸素原子、窒素原子)」です。
地球には、太陽から高いエネルギーを持つ電子が降り注いでいます。電子が大気中の酸素原子にぶつかると、酸素原子は電子からエネルギーを得て、エネルギーの高い状態になります。しかし、この酸素原子は大気中のほかの粒子と衝突するため、エネルギーを失い、すぐにもとのエネルギー状態に戻ってしまうのです。
一方、地上100~1000kmの領域には、粒子はほとんど飛んでいません。すると酸素原子は、エネルギーの高い状態から脱してもとの状態に戻るために、自ら光を放出します。ここで放出した光の波長の大きさによって、緑色、赤色、青色が決まってくるということです。
2. モナリザに眉毛がないのはなぜ?
レオナルド・ダ・ビンチが描いたことで有名な「モナリザ」には、眉毛がありません。その理由を推測していきたいと思います。
まず、モナリザは人間なので、実物のモナリザには眉毛が生えている前提で話を進めていきます。この前提に立つと、肖像画のモナリザに眉毛がない理由としては、
- 何かしらの理由で眉毛を剃っていたため、肖像画に眉毛が描かれていなかった
- 眉毛は描かれていたが、時間の経過に伴い肖像画から消えた(誰かが消した)
- レオナルド・ダ・ビンチがあえて書かなかった
……などなど、さまざまな理由が考えられます。
さまざまな推測がありますが、最近、高性能カメラでモナリザを撮影し、その細部を調べた研究者がいるようです。彼によると、肖像画に眉毛が描かれた形跡がわずかにあるため、もともと眉毛は描かれていたが、時間の経過により肖像画が劣化し、眉毛が消えてしまったと主張しています。
しかし、これはあくまでも推測であり、もう一度実験をして試すことはできません。私たちにできることは、現在考えられる推論を支える証拠を集め、より多くの方々が納得できるようなストーリーを考えることなのかもしれません。
3. 科学でいちばんたいせつなことは?
身近なものごとに常に疑問を持ち続ける姿勢ではないでしょうか。自然現象を解明している研究者、人間の歴史活動を調べている研究者、科学に関わるすべての人たちに共通することは、ものごとを理解するために、実験をしたり、証拠を集めたりして、より多くの人たちが納得のいくような結論を導くという営みを行っていることです。
幼いころに感じた素朴な疑問を忘れてしまった方、本書に書かれた131個の事例に触れ、ぜひみなさんなりの答えを考えてみてください。
世界一ときめく質問、宇宙一やさしい答え ~世界の第一人者は子どもの質問にこう答える~
出版社:河出書房新社
発売:2015/11/6
著者:ジェンマ・エルウィン・ハリス 編 西田美緒子 訳
ISBN:978-4-309-25336-7
価格:本体2500円+税
出版社より:だれもが答えにつまる子どもたちが投げかけた質問への、世界の第一人者による素晴らしい答えの数々! ベストセラー『世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え』が魅力を増して帰ってきた!