――― さて、広告事業「BRAND NOTE」について伺いたいと思います。記事広告を採用したのは、先ほどのお話にもあるように"今までやってきたことを無理なくやれる"からでしょうか?

その通りです。これまでやってきた商品ページやコンテンツと記事広告の作り方、ノウハウに大差はありません。大きな違いと言えば、ページ内にカートボタンをつける代わりに、他社のLPに飛ばすボタンをつけることくらいでしょうか。送客の方法を変えただけで、やっていることは基本的にこれまでと同じです。

取り扱う商品についてはこだわりがあり、僕たちが仕入れるものの対象に入っていない、大企業が展開するマス向けプロダクトを、と決めていました。間接販売の広告では、僕たちが販売できないものを売りたいと思っているので。もちろん僕たちのユーザーにフィットする、すでに多くの人が使っている商品であることが前提です。

良品計画さんとの取り組みでは、「マスプロダクト誕生の舞台裏を伝える」ということを最も意識して取り組みました。毎日使うマスプロダクトが、熱意を持った人たちの手で作られている背景を知ると、それを使うときに気持ちが少しアガりますよね。商品の価値を思い出す度に嬉しくなる。そのために、現場で取り組んでいる人の思いや取り組みの裏側を伝える必要があると感じています。

実際にお話を聞いていると、トップブランドやリーディングカンパニーほど、自分たちの取り組みについて自ら語るのを潔しとしないケースが多いです。言えないから誰かに聞き出してほしい。そのニーズにマッチしたのが僕たちのBRAND NOTEだったのではないか、と思います。

「北欧、暮らしの道具店」における広告事業「BRAND NOTE」を活用した良品計画の取り組み

やりたいのは広告ではなく"紹介"

――― 記事広告に対するユーザーの反応はどうでしたか?

7~9月にかけて9本の記事を展開した良品計画のBRAND NOTEに対して、データや反響を見る限りネガティブな声はなく、読了率も他のコンテンツと変わりませんでした。クライアントの選定がフィットしていたこともあるでしょうが、今までと同じ編集方法で丁寧に作ってきたからだと思います。街中で見ず知らずの人から「この商品、良いですよ!」と言われても困りますよね。

僕たちがBRAND NOTEで目指しているのは、厳密に言うと広告ではなく"紹介"です。友達を友達に紹介するときのことをイメージしてみてください。

仮に、僕の友達のAさんが友達のBさんを僕に紹介してくれる場合、Aさんは「私とBさんは◯◯の部分で気が合うの。青木さんもBさんと◯◯の部分で意気投合しそうだなと思って」と、紹介する理由を明らかにすると、三者の関係性が生まれ、交流を続けるうちに信頼関係もできますよね。

僕たちはここでいうAさんのような役割を果たしたい。自分たちのユーザーに対して、BRAND NOTEを通じて商品やブランドを紹介したいのです。そのためには、紹介する商品やブランドのことを深く知り、なぜ自分たちがその商品やブランドをユーザーに紹介したいのか、理由がなくてはなりません。

ですから良品計画さんとの取り組みも、まず僕たちとどういう価値観を共有しているか、どういう共通点があるかを明らかにする座談会から入りました。関係性を構築する中で、初めて買った無印良品の商品について話したり、気に入っている商品がどう作られてきたか教えてもらったり。そうやってお話を伺って知った「商品やブランドの背景にあるストーリー」を、コンテンツとして展開してきたわけです。

ユーザーと丁寧で誠実なコミュニケーションを図り"続ける"

また、広告を通じて商品やブランドに興味を持ってもらうためには、相応の順序が必要だと考えています。丁寧に順を追ってコミュニケーションすることは、手間がかかるように思えるかもしれませんが、実は最も合理性があるやり方。たとえば、僕たちが突然「雑貨屋ですが食品を売ります」と言っても上手くいかないでしょう。

前提として、ユーザーをごまかせると思ってはいけないです。BRAND NOTEを始めるにあたり、ユーザーに向けてお知らせ を書きました。その中で「新たな収益機会をつくり、よりコストをかけてコンテンツをつくることができるための体制をつくらなければと考えてきました(原文ママ)」と、収益性を高めるという目的を明言しています。

同業者や関係者、メディアの方からは「それ、言っちゃうんだ!?」と驚かれたのですが(笑)。でも普通に考えて「世の中を良くするためにBRAND NOTEを始めます」なんて書いても、いかにも嘘っぽいじゃないですか。少なくとも僕はそう思います。

より良い仕事をしたい。より高度なメディアにしたい。この思いに嘘偽りはありません。これらの目標を達成するためには、当然収益性を高める必要があります。その事実をきちんと伝えた上で、新たな取り組みをスタートさせたい、という思いを素直に書きました。

――― 最後に、今後の展望について教えてください

いろいろな企業でお話を聞いていると、マスプロダクトの開発にメインで携わっているのは、20~40代の社員の方。まさに、僕たちのユーザー世代と重なります。余談ですが、その中には北欧、暮らしの道具店のユーザーとして、僕たちと以前から関わりを持ってくださっている方も少なくありません。

僕たちと同世代の人たちが、良い商品を作ろうと日々奮闘している――そのことをもっと信じたり、期待したりしても良いのではないでしょうか。僕たちが商品やブランドを誠意を持ってユーザーに紹介し、その上で僕たち・企業・ユーザーが良い形でつながれば、すごくハッピーだなと思っています。