Oracle Marketing Cloudはデジタル・マーケターの業務に特化したSaaSである。前編に続いて、日本オラクルのマーケティングクラウド統括本部長に就任したトニー・ネメルカ氏に日本オラクルのデジタルマーケティング戦略について尋ねるなか、ターゲットとする顧客像や顧客からのOracle Marketing Cloudの評価について聞いた。

日本オラクル マーケティングクラウド統括本部長 トニー・ネメルカ氏

Oracle Marketing Cloudは誰をターゲットとしているか?

日本ではCMOや経験豊富なマーケターが少ないと認識されているなか、ネメルカ氏にOracle Marketing Cloudが狙っている顧客層について聞いてみた。

ネメルカ氏は、Oracle Marketing Cloudのターゲットはあくまでもマーケターであり、CIOやIT部門にアプローチしているわけではないと語る。また、CMOにアプローチしているわけでもないと言う。では、マーケターとはどのような部門にいるのか。それは業界によって異なる。

自動車メーカーでは車両ブランドを統括する部門の場合もあるし、ディーラーとの関係を統括している部門の場合もある。小売業では主にオンラインのリテールを担当している部門、銀行では個人顧客の獲得を担当する部門といった具合だ。ネメルカ氏によると、「米国でもCMOを中心とした中央集権的な組織体制の下、デジタルマーケティングに関する施策を展開している企業はまれ」だと言う。マーケターという顧客像が語られる際、よくCMOという言葉が出てくるが、デジタルマーケティングの最先端にある米国でもCMOは象徴的な存在に近いようだ。

「強いて言えば、役職名に『デジタルマーケティング』が付いた人がキーパーソンになることが多い」とネメルカ氏は続ける。また、「国内では、企業の内部ではなく企業の外側にいる広告代理店の担当者が、デジタル・マーケターと呼ばれているケースが多い」と言う。

マーケティングに関わるテクノロジーはたくさんあり、適用するテクノロジーを見極めるには深い知見が必要である。これまで長らく、さまざまなブランドは知識を持つ外部に依存してきた。これには、今までの広告メッセージが製品・サービスの認知度を上げることに特化してきたことが大きい。

だが、デジタルマーケティングの世界では、社内マーケターが主体的にリーダーシップを取ることを促す変化が進行している。広告代理店側もこの変化を踏まえたうえで、デジタル・マーケティング分野へ積極的に投資をし、認知度向上にとどまらない新しい知識の獲得に急いでいる。したがって、社内のマーケターに時間をかけてアプローチするのと同じぐらい、広告代理店をはじめとする外部インフルエンサーに蓄積されている知識を活用することが市場の成長のカギになりそうだ。

Oracle Marketing Cloudが選ばれる理由

さらに、Oracle Marketing Cloudを導入した顧客から、どのような点が評価されているのかについて尋ねた。ネメルカ氏は「日本市場に対するコミットメント」と「プラットフォームの提供」の2つを挙げた。

「まず、Oracle Marketing Cloudを多くのお客さまが使っているということは、ユーザーではない人々が『自社にとってもよい製品なのではないか』と興味を持ってもらえる点で有利である。また、Oracle Marketing Cloudは、M&Aをへて最高の製品をポートフォリオに加えてきた。そして、提供している製品が持つ機能に付加価値を加えていく努力をすることを約束している。OracleがMarketing Cloudに対して積極的に投資している姿勢を見てもらえば、今だけでなく長期的な投資を任せられるという、信頼感をお客様の中に醸成することに役立つ。これが日本市場の中でOracle Marketing Cloudに強く興味を持ってもらう理由の1つだと考えている。

次に、マーケティング・テクノロジーは統合の動きはあるものの、それを上回るペースで増加しており、現在1800を超える。これはマーケターにとって大きなジレンマを引き起こしている。この混沌とした状況を整理しながら、ブランドとお客さまとの対話にテクノロジーを使っていくには、テクノロジーの基盤となるプラットフォームが求められる。Oracleが単独でトップの技術を持っているだけでなく、プラットフォーム上でさまざまな製品やテクノロジーを使うことができるプラットフォームベンダーであることも、お客さまに評価される理由の1つである」(ネメルカ氏)

さまざまな競合製品があるが、Oracleが目指すのはマーケターによりよい仕事をしてもらい、成果を上げてもらうことだという。そのためには、エコシステムのパートナーを含めてマーケティング・テクノロジーをできるだけ多くの人に使ってもらいたいと、Oracleでは考えている。大切なのは、最終的にマーケターの方がテクノロジーを使って価値が見いだせるか否かである。

「日本では毎日、マーケティング・テクノロジーを導入している企業が増えていると聞いているが、ERP、SCM、CRMといった他の企業向けのテクノロジーに比べて適用のスピードが速い。これはマーケティングテクノロジーで価値が創出されている証拠だと考えている」とネメルカ氏は述べた。