8月6日、ソフトバンクグループは第1四半期決算説明会を開催し、2015年4~6月期の連結決算と同社の経営状況について発表が行なわれた。
説明会の前半に行なわれた連結決済の説明には、グループ会社のソフトバンクロボティクスから発売されたロボットPepperが登場。孫社長のかわりに説明するパフォーマンスを行なった。このパフォーマンスについて孫氏は「数日前に思いついてPepperに無茶ぶりした。世界で初めてロボットが決算会見をする」と説明している。
今回の発表によると、純利益は2134億円で前年同期比は175%増。営業利益は3436億円でこちらの前年同期比は8%増となっている。
また、売上高は前年同期比+10%の2兆1392億円。10パーセント増の内訳として、国内通信と物販売り上げの増加と、Sprint事業の売り上げが円安により膨れていることが要因となっている。
そのほか純利益が好調な理由として、中国での通販事業のアリババからの持分法投資利益443億円が大きく貢献している。
国内の通信事業に関しては、ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルの4社を統合したことにより、経営の効率化が進められていることをアピール。4社が合同したソフトバンクの売り上げは、4824億円と発表された。
モバイル通信に関しては、昨年度から下がっていたARPUが今期では上昇して、状況は好転。ヤフーとの連携や成長領域の開拓を進めることで、さらなる収益の増加を目指している。
また、解約率も、前期の1.57%に対して今期は1.24%と改善しており、前年同期と同じ水準に戻している。ただし、ほかのキャリアと比べて高い水準となっており、今後の改善すべき課題となっている。
インターネット企業の状況については、国内ではスマホの広告売り上げ、海外では子会社の好調な業績が伝えられたものの、営業利益が491億円で前年同期とほぼ同じ結果となった。
いずれの事業も大きな赤字となるような目立った問題点は観られないが、これまで同社が発表してきたような拡大路線のアナウンスではなく、堅実な成長をアピール。
大きなアピールポイントがないため、話題性もふくめて決算発表にPepperを採用したのではという印象だ。
大まかな決算発表はPepperに任せて、孫社長自ら説明を行なったのが米Sprintへの取り組み。先日アメリカでは、携帯電話の契約件数では、TモバイルUSと逆転し4位に転落したと発表されており、Sprintの扱いについて注目が集まっていたためだ。
孫社長自身は「SprintとT-Mobile USを合併させて、三国志ではないが第三極として戦うつもりだった。しかし、合併の認可が米国当局から受けられなかったため、冬の決算発表では風邪を引いていたことも自信をなくしていた。場合によってはSprintを売っぱらうことも覚悟した」と半年ほど前の状況を解説。
続けて「季節は変わり、風邪は完全に吹き飛んだ。自信がよみがえってきた。作戦が見えてきた。設計図が見えた」と、Sprintの改革に意欲をもって取り組んでいること語った。
Sprintの改革には大きく2つの柱で取り組むという。ひとつめははOPEX(運営費)の削減。もうひとつはCAPEX(設備投資に関する資本的支出)の大幅効率化だ。これは、ソフトバンクがボーダフォンを買収して現在のような経営状況に立て直した日本での手法を参考にしたもの。
特に孫社長が強くアピールしたのが、CAPEXの大幅効率化について。
モバイル事業では通信品質やカバレッジの確保のため、設備投資費が重要となる。会見でも孫社長は「通信事業者、唯一最大の商品はネットワーク」と説明。しかしこれまでSprintの通信品質については、TモバイルUSとの合併も計画していたため、Sprintの技術部門に任せていたとのこと。これを改め、孫社長自らチーフ・ネットワーク・オフィサーとしてネットワーク設計に取り組むという。
具体的にはSprint側は5年計画で次世代ネットワークの構築を提案してきたが、孫社長はこれを「机を叩いて拒否」し、新たに2年間でネットワークを構築する案を提案。Sprint側からの反対もあったが、反論をひとつずつつぶしていき、期間と予算を大幅に圧縮した計画がスタートしているという。
実際にソフトバンクはボーダフォン買収後にかかったCAPEXは、ほかの2キャリアよりも少ない。少ない設備投資でほかのキャリアと肩を並べて戦える通信品質を構築した強みをアメリカでも展開する予定だ。
具体的には、Sprintが持っている2.5GHz帯を使っての改善がポイントとなるとのこと。2.5GHz帯は800MHzなどと比べるとエリアの確保には向かないが、120MHz幅と広い帯域が使えることから、高速通信にはピッタリ。
質疑応答で2.5GHz帯の運用方法について「基地局を大量に設置していく」と孫社長は解答しているため、日本の都市部でも採用している、小セル基地局の大量設置による通信品質の向上を行なっていくと思われる。
一時期はモバイル事業に興味がなくなったとも見られていた孫社長だが、買収後3年が経過しても好転しないSprintの動向が、逆に孫社長のやる気に火を付けたようにも感じられる力の入れよう。
「自分はいつも2年先を見ている。2年後は1位とまでは行かなくても、Sprintは着実に改善している」と孫社長は力強く説明。今後の動向に注目だ。