マンハッタン・アソシエイツ 日本・韓国代表の清水博氏

6月10日・11日に、東京流通センターで物流関連の展示会「アジア・シームレス物流フォーラム2015」が開催された。今回は、ワールドワイドでサプライチェーン・マネジメント・ソリューションを展開するマンハッタン・アソシエイツのブースを訪れ、“真のオムニチャネル”実現のために必要なソリューションとは何かを探ってみた。

同社は、業界でも珍しい物流系ソフトウェアの開発・提供に特化した、サプライチェーン・マネジメント・ソリューションのカンパニーだ。

同社 日本・韓国代表の清水博氏は「弊社では物流系ソフトウェアに関して、年間約50億円の開発投資を続けており、製品の完成度には自信があります」と、同社の強みについて語る。

複雑性を増す物流倉庫と市場変化

同社のサプライチェーン・マネジメント・ソリューションで中心となっているのが、倉庫管理システム(WMS)だ。近年はアパレルや流通、小売などの各業界において、物流倉庫の業務が複雑性を増している。特にアパレルは品目数の多さに加えて、プロダクトライフの短さ、そして季節の移り変わりで返品も多いことなどから、倉庫の負担が一般の製造業より高くなるという。こうした複雑性の高い倉庫にも対応できるよう、同社のWMSには多彩かつ細かい機能が備わっているのである。

くわえて、これらを標準機能として提供しているのも、企業にとって大きなメリットといえる。標準で詳細な部分までカバーしていれば、倉庫内のプロセスに特殊性があってもシステムをカスタマイズする必要がない。結果として、トータルコストを低く抑えられるというわけだ。

清水氏によると「WMSに関しては2000年代前半に、自社開発の古いメインフレームからパッケージ製品へ置き換えていくという大きな波が到来しました。そこから10年ほど経過した現在、ハードウェアのサポート切れなどでまた新しい動きが見え始めています」と、市場全体に変化が見られているという。

さらに、企業の考え方についても「オムニチャネルをはじめ、物流倉庫に対する重要性が今までとはまったく異なる位置づけになってきたように感じます」と続けた。

従来の倉庫管理では、店舗向けにある程度大ロットで商品を出庫するのが一般的だった。しかし近年はEコマースの普及により、商品を1個単位で出庫する必要が出てきたほか、返品対応など倉庫の業務がより複雑化しているという。また、競争が激しい小売業界では、いかに店舗スタッフが顧客対応の時間を増やし、購買につなげるかに注力しており、店舗における荷受から陳列までの手間を可能な限り減らしたいという流れも出てきている。そこで、従来店舗で行ってきた作業を上流へと移行し、効率化を図る動きが見られるのだ。

そのほか、特にグローバル展開をしている流通・小売企業では、オムニチャネルを見据えた動きが活発化している。従来は情報物流サービスに関して物流業者へ丸投げしていた企業も多かった。ところが、倉庫管理の複雑性が高まってきたこともあり、各国で物流業者やシステムが異なると、オムニチャネルの構築に支障が出てくる。このような背景下で、グローバルでシステムが統一されていることの有効性が徐々に認識されてきたそうだ。

“真のオムニチャネル”の実現を目指す

こうした市場変化に対し、同社ではWMSを中心として、オムニチャネルに対応したトータルソリューションを提供できる点を大きな強みとしている。

オムニチャネルを実現するには、オーダーの引当が非常に重要な役割を担う。企業は顧客のニーズに合わせて引当をかける必要があるが、商品をいつ届けなければならないのか、顧客が店舗へ直接取りに来るのかなどの条件によって、商品の引当を行う場所が大きく変わってくる。たとえば顧客が店舗での早期受け取りを希望した場合、倉庫だけでなく店舗の在庫状況までをリアルタイムに把握し、なおかつその商品を顧客が来るまでに店舗スタッフがピックアップしておく必要がある。

「そこまで実現するためには、倉庫および店舗の在庫管理はもちろん、注文の引当、店舗からの出荷指示、店舗スタッフへの指示まで、一連の流れに対応した機能がすべてそろっていなければいけません。ここまでできてこそ、“真のオムニチャネル”といえるわけです」と清水氏は語る。

また、Eコマースで返品が発生した際も、払い戻し対応なのか、別の商品と交換するのか、交換の場合は店舗での受け取りもしくは送付になるのかなど、数多くの選択肢が出てくるだろう。返品をスムーズに完了するには、顧客からの連絡を受けるコールセンターが、情報をすべて一元管理できている必要があるわけだ。

この点についても清水氏は「弊社のソリューションでは、コールセンターの担当が顧客と会話をしながら、最適な選択ができるように情報提供する機能も備えています」と語る。 近年、オムニチャネルという言葉自体の認知度が上がり、取り組みを強化する企業も増えてはいる。しかし実際のところ、日本においてリアルタイムに倉庫と店舗の在庫が確認できるシステムを導入している企業はまだごく少数だ。

「真のオムニチャネルとは、たとえば店舗に在庫がなかった場合、店舗スタッフがその場でタブレットから倉庫と他店の在庫を確認し、リアルタイムでの取り置きや別店舗へのピックアップ指示まで行える、そういったものです。米国ではこれを実現できている企業が結構あるのですが、日本ではまだそこまでのレベルに達していない現状があります」と清水氏は語る。

日本での“真のオムニチャネル”実現に向けて

同社では現在、日本市場向けにWMSと、グローバル規模で在庫の一元管理が可能な「EEM(Extended Enterprise Management:拡張サプライチェーン管理)」を中心に展開している。これらを中心に、同じプラットフォーム上で輸送管理や在庫の最適化、在庫の引当、在庫計画、注文管理といった各種ソリューションが利用可能だという。

「弊社では米国と同じように、日本でも真のオムニチャネルに挑戦してくださるパートナー企業を募集しています。大手流通業とパートナーを組み、理想的なオムニチャネルの実現に向けた取り組みを加速していきます」と、清水氏は今後の展開をアピールした。