東京都内にある中高一貫の女子校である品川女子学院は、今年で創立90年を迎える歴史ある学校だが、大学合格という目先の成果を求めるのではなく、28歳になったときに社会で活躍できる人材育成を目指す「28プロジェクト」というユニークな教育プログラムが近年注目を浴びている。その一環として、品川女子学院では、Evernote Businessの導入や、ヤフーなどの企業とのコラボレーション授業を実施するなど、教育現場へのIT活用や最先端のICT教育を積極的に推進している。
ヒト型ロボット「Pepper」向けのアプリ開発を手がけるヘッドウォータースは、こういった同校のICT教育に対する熱意に着目。ヘッドウォータースの技術力を生かして何かできないかという思いから今回、同校とのコラボレーション授業の実施に至った。
コラボレーション授業には、中学2~3年生の生徒約40名が参加。「学校にいてほしいPepper」をテーマに、5月からPepper用アプリの企画・開発を進めてきた。
報道関係者に向けてその様子が公開された6月16日の授業では、主にアプリのプログラミング作業とPepper実機でのテストが行われた。
授業で開発するアプリは、「登下校する生徒を笑顔にして写真撮影するPepper」「来校者に対して校内案内するPepper」「保健室に来た生徒を癒すPepper」の3つ。生徒らが授業で考案した数々のアイディアのなかから、「Pepperの特徴を生かしていること」、「学校にいることの価値が見出せること」を基準にヘッドウォータースが選考したものだ。
生徒らは授業のはじめに、Pepperにどんな言葉を喋らせるか、どんな動きをさせたいか、各々の意見を発表し、アプリに盛り込む詳細な機能を決定。それぞれの機能に対して、2~3名ずつで開発に入っていった。
開発には、Pepperなどのロボット用アプリ開発が行えるソフトウェア開発キット(SDK)「Choregraphe」を利用。Choregrapheでは、ビジュアルプログラミングの方法が採用されており、プログラムのコードを記述できなくても、機能ごとに用意されたボックスをドラッグ&ドロップでつないでいくことで、簡単にプログラムを構築することが可能だ。
プログラミングの授業というと、その難しさに音を上げてしまう生徒も出てきそうなものだが、「Pepperの喋り・動き」というわかりやすい成果物と、ヘッドウォータースのスタッフの熱心なサポートのおかげで、PCの画面に向かう生徒らの表情は皆、真剣だ。「生徒を笑顔にするアプリ」を開発していた生徒らは「Pepperを踊らせたい!」と、試行錯誤しながら、Pepperに複雑な動きをさせるプログラムを作成していた。
ネスレやみずほ銀行など、さまざまな企業でPepperの導入が進みつつある昨今だが、まだまだその可能性は未知数だ。ヘッドウォータース 人とロボット事業部 事業部長 塩澤正則氏は、「この授業から実用化に至るものが出てくる可能性は十分にある」と、女子中学生ならではの柔軟な発想力に期待しているという。
授業の最後に実際にPepperを動かして開発の成果を発表した生徒は、「実際に動かしてみると、頭の中で想像していたものと違った。実物で試しながらプログラミングしていくべきだった」と反省しながらも、「プログラミングをもっと勉強してみたい」と目を輝かせていた。