ネットワークに軸足を置いた数々のソリューションをはじめ、仮想化やクラウド、モバイルデバイス活用など、顧客の業務効率や生産性向上に寄与する事業を推進しているネットワンシステムズ。同社では「働き方革命」というテーマの下、仮想デスクトップやユニファイドコラボレーション、BYODなどの導入によるワークスタイル変革を積極的に進め、さまざまな効果を得ている。

前編では、ICT活用の観点から、同社の「働き方革命」の取り組みを紹介したが、同社は人事制度においてもさまざまな工夫を凝らしている。そこで後編では、人事部門のリーダーとして他部門と一体となって取り組みを進めている同社経営企画本部人事部の部長、下田英樹氏の話をお届けしよう。

ネットワンシステムズ 経営企画本部人事部 部長 下田英樹氏

--ワークスタイル変革を支える御社の人事制度とはどのようなものでしょうか?--

下田氏: 中核となっているのは、「テレワーク」「フレックスタイム」「シフト勤務」という3つの人事制度です。このうちテレワークは、働く「場所」を工夫することで、移動を減らして仕事に集中してもらうことが趣旨です。フレックスタイムは、働く「時間」の工夫です。月単位で働き方の計画を立てることができるようになっています。そしてシフト勤務では、働く「時間帯」を工夫して、24時間365日、夜間も対応可能な体制を実現します。

--人事制度の変更により、仕事時間の長さは変わりましたか?--

下田氏:最初のうちは時間が減る社員と逆に増える社員と二極化の傾向が見られましたが、現在では、全体的に残業時間が減っています。仕事量が多い社員がいれば、他の社員がフォローするといったように、時間と場所に縛られずに仕事ができる環境が整ったことで、組織・チーム単位で柔軟に仕事をしやすくなっていると感じます。

--2013年5月の本社移転から、全社員が仮想デスクトップを利用していますが、仮想デスクトップの導入はワークスタイルにどういった変化をもたらしましたか?--

下田氏: 仮想デスクトップは一部の社員での導入から丸4年たちますが、ワークスタイルに合わせた柔軟な利活用が進んでいます。なかなかうまく使えないと言う人の理由も過去と今では大きく変化しています。導入直後は、「仕事で紙を多く使うので自宅では不便」「職場の周囲の目を気にして、なかなか在宅勤務をする勇気がない」といった声が聞かれました。つまり、仕事や組織の文化的な側面がネックになっていました。しかし、今ではそうした声はまったく聞かれなくなり、フェース・ツー・フェースのコミュニケーションが大事な場面ではあえて同じ場所と時間で一緒に仕事をしようといたように、健全な理由で旧来のワークスタイルも維持する傾向が見られます。

新制度の活用状況は? 資料:ネットワンシステムズ「2013年度社内ワークスタイルアンケート調査」

--社員の意識面ではどういった変化がありますか?--

下田氏: 会社で働くということに対する意識が変わってきたように感じています。若手の社員ほど仕事とプライベートのバランスを重視する傾向があるのですが、そうした若年層の社員の間で「定年までこの会社で働きたい」という意識がとりわけ強くなっています。ワークライフバランスを大事にする会社の文化が良い影響を与えているのではないでしょうか。

ワークライフ・バランスの実現度は? 資料:ネットワンシステムズ「2013年度社内ワークスタイルアンケート調査」

--人事部門としては喜ばしい傾向ですね。--

下田氏: そうですね。「こういう環境で働いていると、もう他の会社では不便に感じてしまうだろうから転職する気が起きない」といった声をよく聞きます。人事としては特に大事な成果だと考えています。

--ワークライフバランスの面で、ほかにどのような成果が見られますか?--

下田氏: 親の介護などでテレワークを活用するケースも増えています。あと、足にケガをしてしまった社員が数週間自宅で勤務を行ったり、育児中の社員でも週に数日のみフルタイムで働くことができたりと、普通であれば長期休暇しか選択肢のない場合でも無理なく働くことができるので、職場復帰がしやすいといった声を聞きます。

--採用面では影響がありますか?--

下田氏: 有りがたいことに、当社のワークスタイル変革のチャレンジを魅力に感じて応募してくる学生が増えています。特に女性の応募者が目立ち、今は新卒採用の4割以上が女性です。少子高齢化が進みこれから働く世代が減っていきますので、競争力を維持向上させるべく、先手を打って良い人材が育つ環境を整えていきたいですね。

--"いつでもどこでも仕事ができる"ということは、裏を返せば仕事から逃げられないといったイメージもあると思うのですが、その点はいかがですか?--

下田氏: 常に社員の働き方をモニターしていて、「過重労働はつぶす」というアプローチをとっています。確かに、マネージャークラスの間には、いつも仕事に追われている気がするというような声もゼロではありません。直接自分の目が届く範囲外までマネージしなければならないので、マネージャーの負荷が増えているのは事実でしょう。マネージャー以上は裁量労働制を採用していてアウトプット重視なので、効率的な働き方を工夫するというのも仕事のうちだと認識しています。とはいえ、8割以上のマネージャーが、現在のワークスタイル変革のチャレンジを続けたいと言っていますから、今のところは大きな問題はないでしょう。マネージャーにチャレンジ意欲が失われてきたり、疲れが見えたりした場合は、少しルール面を改正するなどの支援をする必要があるかもしれません。

--最後に、これからワークスタイル変革にチャレンジしようとしている企業へのメッセージをいただけますか。--

下田氏: 他の会社の方から、「なかなかうまくいかないのだがどうすればいいのか」といった相談を受けますが、そうした場合の多くが、社内に問題を抱えているのだと思います。ワークスタイル変革は、経営陣、各部門、組合が一枚岩になっていないと絵に描いた餅になってしまいがちです。そうならないよう、社内でのコミュニケーションをしっかりととることが大事でしょう。単にシステムを導入しただけではうまくいきません。ワークスタイル変革は、「ツール」と「文化・制度・意識」が両輪なのですから。

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