米Broadcomは5月26日に都内にて記者説明会を開催、本国のSid Shaw氏(Photo01)が同社の「WICEDデバイス」を用いてのIoTに関する戦略を説明した。
Photo01:Senior Product Line Manager, Embedded Wireless/IoTのSid Shaw氏。手に持っているのが、同社の「WICED Sense」だ |
4月にも似たような説明会があったばかりだが、今回はもう少しWICEDに焦点をあてたものとなっている。元々同社はConnectivityに強みを持つベンダーであり、Wi-FiとBluetoothの両方に強いポートフォリオを持つ(Photo02)。そもそもBroadcomの提唱するWICEDはPhoto03にあるように"Wireless Internet Connectivity for Embedded Device"の略で、特定の技術を指すものでは無い。それもあって、今はWi-Fi向けの「WICED WI-FI」と、Bluetooth Smartをサポートする「WICED Smart」という2種類のブランドを作って普及に努めている形だ。
Photo02:ラフに言えば左がWi-Fi、右がBLEということになるが、要するにWearableは1人ひとりが身につける数には限りがあるが、左の様な機器は膨大な数が見込めるという話 |
Photo03:要するにEmbedded DeviceでInternet Connectivityをサポートしてれば全部WICEDという話。個人的にはIEEE802.15.4も入れてあげて欲しい |
さて、話は一転して昨今のIoTデバイスの市場投入までの流れを説明している。通常、まずプロトタイプを作ってコンセプトや動作その他諸々を確認、行けるとなったら資金を調達し、一気に製造に持ってゆくという形(Photo04)だが、問題はここで最初のプロトタイピングに一般で5~7カ月掛かることである。「これより長い事はない」(Shaw氏)というのは、昨今の製品投入のTAT(Turn Around Time)を考えると頷けるものがある。ただ、問題はこれでも長いわけで、これをどうやって縮めるかという問題である。
こうした事に向けてBroadcomは今年5月12日に2つのリリースを出した。1つはBCM20706で、96MHzのCortex-M3コアにBLE対応のコントローラ、さらにpower amplifie(PA)まで1チップ化したSoCであり、これを利用する事で簡単にデバイスをWICED対応機器にすることが出来る。もう1つがAppleのHomeKitへの対応で、「現時点でのHomeKitのすべてのCategoryとClassに対応している」とする。また、評価キットやReference、Communityなどを充実させてゆくとする(Photo05)。まず評価キットを利用することで、Connectivityに関してはそれ以上考えなくても良い。それを量産するにあたっては、評価キットの回路を含むすべての情報がコミュニティに公開されているので、それを参考にすればすぐに量産に入れる。問題があれば、コミュニティですぐに議論できるという仕組みだ。
こうした環境作りにより、すでに多くのWICED対応IoT製品が市場に出ており(Photo06)、同社としてはこの勢いをさらに加速させてゆきたいわけだ。日本についても、Smart lockや天候センサからロボットまで幾つかの採用事例があるとしており(Photo07)、日本のマーケットでさらにこの勢いを加速したい、としている(Photo08)。
Photo06:製品の一例。Smaet Watchからエアコンまで随分幅広い |
Photo07:3番目のものは、「何回投与(注入)したかわかるシリンジ用ケース」で、これは糖尿病向けのもの。ただ次の「暗いところで輝く、日本酒用の枡」ってのは全然イメージできない |
Photo08:これはまぁお決まりのメッセージである |
ところで途中に出てきたコミュニティ。具体的にはココの事で、氏によれば「正確な数字は持ち合わせていないが、このところ参加する企業、および開発者の数が急激に伸びている」としている。ただこのコミュニティは、企業あるいは大学(ただし米国に限る:要するにドメインが.eduで終わる必要がある)の人間でないと登録が出来ない仕組みになっている。これはコミュニティ内部でBroadcomが持つIPに関わる部分を開示したりしている関係で、個別にNDAを結んだりする手間を省くために入り口で制限しているとのこと。なので独立した個人などは登録できない。今のところこのポリシーを変える予定はないそうだ。また今はコミュニティ内部は英語のみで運用されているが、今年第3四半期末をめどに、多言語対応に切り替えるとの事。もっとも大半は機械翻訳で、マニュアルなど重要なもののみ手作業の翻訳となるそうで、それほど翻訳の質に期待してはいけないかもしれない。
ちなみに会場には、実際に幾つかのWICED対応製品も展示されていた(Photo09~14)。