理化学研究所(理研)は4月21日、高強度レーザーを用いてスペースデブリ(宇宙ゴミ)する除去技術を考案したと発表した。

同成果は理研戎崎計算宇宙物理研究室の戎崎俊一 主任研究員、光量子工学研究領域光量子技術基盤開発グループの和田智之 グループディレクターらと、仏エコール・ポリテクニーク、仏原子核研究所宇宙物理センター/パリ第7大学、伊トリノ大学、米カリフォルニア大学アーバイン校との共同研究によるもの。3月13日付(現地時間)の国際宇宙工学誌「Acta Astronautica」オンラン版に掲載された。

スペースデブリの量は近年の宇宙開発の活発化に伴って増加しており、地球周回低軌道上には約3000tが存在するとされる。その速度は弾丸よりも速い10km/秒に達し、小さなスペースデブリであっても人工衛星や宇宙ステーションに衝突すると致命的な損傷をもたらす可能性がある。その中でも0.3~10cmサイズのスペースデブリの数はおよそ70万個以上とされ、小さいため検出が難しく、最も危険性が高いが、これらを除去する方法は考案されていなかった。

同研究グループは高強度レーザーをスペースデブリに照射し、その際にスペースデブリの表面からプラズマが噴き出す力を利用して、速度を減速させ、地球大気へ再突入させて除去する手法を考案した。同手法では、100km以上離れた場所から10秒程度の照射で10cmサイズのスペースデブリを地球大気へ再突入させることができるという。

一方、スペースデブリの検出には口径約2.5mのEUSO型超広角望遠鏡を用いる手法を提案。これはデブリの方向と速度をEUSO型望遠鏡で大まかに決定した後、その方向に向かってレーザー探索ビームを照射し、スペースデブリの正確な位置と距離を求めるというもの。EUSO型望遠鏡は±30度の広い視野を有し、100kmの距離にある0.5cmサイズのスペースデブリから反射する太陽光を検出するのに十分な感度を持つ。

今回考案された除去手法の実現には、「平均パワーが500kWに達する宇宙用高強度レーザーの開発」「高速で動くスペースデブリの検出からレーザー照射までを1秒以下で行う望遠鏡の開発」という課題がある。前者については、ファイバーを多数並列に使うことでクリアできる見込みで、後者についても最新の光学設計技術を用いれば十分可能と考えられている。

今後、国際宇宙ステーションなどを活用して段階的に技術検証し、最終的には地球観測のための人工衛星が密集する高度700~900kmの付近にスペースデブリ除去専用の宇宙機を打ち上げることを目標としている。同研究グループは、この宇宙機を5年程度運用すればcmサイズのスペースデブリの大部分を除去できるとしている。

宇宙用高輝度レーザーシステムを可能とするCANレーザーシステム。レーザーは1000本以上のファイバーで並列に増幅され、約1.5mの光学系でスペースデブリに向かって射出される。

検出用のEUSO型超広角望遠鏡とレーザー射出用光学系。スペースデブリを、EUSO型超広角望遠鏡で検出し、位置と運動方向を決定する。スペースデブリの方向にまず探索ビームを射出し、帰還光子シグナルからその位置と距離と運動方向を正確に求める。