北海道で3月18日未明、北の夜空がうっすらと赤く染まるオーロラが観測された。オーロラは、太陽から飛来する磁気と電気を帯びた粒子が大気中の粒子と100㎞以上の上空で衝突し、美しく輝いて躍動するのが見える幻想的な現象である。北極や南極に近い高緯度でよく出現するが、日本のような中低緯度では珍しい。今回は名寄市で観測され、国内では2004年11月の北海道下川町以来11年ぶりだった。肉眼では見えなかったが、なよろ市立天文台の職員の中島克仁(なかじま かつひと)さんが写真の撮影に成功し、公表している。

写真1. 北海道陸別町の陸別HFレーダーサイトで3月18日午前1時10分、北の空を25秒露出して赤いオーロラを撮影(提供:名古屋大学太陽地球環境研究所)

名寄市より南東約100㎞の北海道東部の陸別町にある名古屋大学太陽地球環境研究所陸別観測所でも、北から北西の空に赤いオーロラを観測した。同観測所は5年前から自動制御システムで掃天フォトメーターや全天カメラ、磁力計などを作動させており、それらのデータの一部と連続写真の動画を速報として公開した。国内のオーロラに関して、科学的な観測データがこれほどそろったのは初めてという。

図1. 陸別の掃天フォトメーターのデータ。観測波長はオーロラの波長630nmの赤い光(酸素原子)。グラフの下が北、上が南の光の強さを表す。真夜中すぎの午前1時~午前4時に、赤い光が北の方角で明るくなっているのがわかる。(提供:名古屋大学太陽地球環境研究所)

写真2. 陸別で波長630nmの赤い光の発光を全天カメラで捉えた連続画像。光の強さを人工的な疑似カラーで表示。時刻は左上の日本時間3月17日午後11時半すぎ~右下の18日午前3時半前(数字は世界時)。魚眼レンズの画像で、上が北、下が南、中心が天頂。18日午前1時前までは空がかなり曇っているが、それ以降、北から北西の空にオーロラが地平線近くに現れた。(提供:名古屋大学太陽地球環境研究所)

それによると、このオーロラは日本時間3月17日午後2時ごろから始まった太陽からの磁気嵐に伴って発生した。オーロラの最大の明るさは18日午前2時ごろ、北の地平線から15度の位置で酸素原子の発光輝線630nmで約0.5kR(キロレイリー、明るさの単位)に達した。人の目で見える明るさは数kR以上のため、陸別町でも肉眼で見えなかったようだ。オーロラの色から、約250㎞上空で発光が起きたとみられている。

観測の中心になった名古屋大学太陽地球環境研究所の西谷望(にしたに のぞむ)准教授は「陸別観測所に各種の自動装置を備え付け、5分ごとの継続観測を始めて、5年たってようやくオーロラが出た。太陽活動は2013年、14年がピークだったが、そのピークの後にオーロラは出現しやすいとみられている。しばらくは、日本でオーロラが見える可能性はある。今回の総合的なデータから新しい発見を期待している。詳しく解析して論文として報告したい。観測できてよかった」と話している。