シャープは2月13日、液晶事業説明会を開催し、2014年度の液晶事業の見通しと、今後注力する車載用ディスプレイの取り組みについて発表した。

液晶事業について説明する代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネスグループ担当の方志教和氏

2014年度第3四半期の同社液晶事業の売上高は、前期比6.3%減、前年同期比14.2%減の2380億円だった。第4四半期は前期比13.8%増、前年同期比15.3%増の2710億円を見込んでいる。これにより、2014年度の営業利益は400億円となる見通し。

第3四半期の業績悪化は、タブレットなどの中型市場の需要拡大の遅れや、中国スマートフォン市場の競争激化によるパネル価格の下落、WQHDなどの高精細パネル市場の立ち上がりの遅れにより、流通在庫が増加したことなどが要因だったという。

そして、これらに加え、中国のサプライチェーンでのトラブルも挙げた。昨年夏のタッチパネルメーカー台湾Wintekの経営破綻によるもので、「月産100~150万枚規模のスマートフォン向け液晶とタッチパネルの貼り合わせ工場が、夏以降も稼働していたが、12月初旬に突如閉鎖しストップした。徐々に他のタッチパネルメーカーへの切り換えを進めていたが、このルートに当社製品が多かった」(代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネス担当 方志教和氏)と詳細を述べた。

一方、今後の展開について、2015年度以降の直近の対応では、中型パネルの新規顧客開拓と拡販を図り、亀山第2工場(三重県)の中小型生産比率を50%まで引き上げることを目指す他、中国市場での競争優位性を確立するため、スマートフォンメーカーが多く集まる華南地区の営業強化、IGZO液晶の高性能化、インセルタッチパネルの早期量産化を進める。

なお、インセルタッチパネルについては、今年6~7月より量産を開始する予定で、スマートフォン向けの中小型では、WQHD対応品の量産を低温poly-Si(LTPS)でスタートさせる。17型クラスの中型はIGZOで進めていく方針で、サイネージ向けなどの大型に関してはIGZOとコントローラを組み合わせた「フリードローイング技術」で実現していくとした。

2017年以降の中期の対応では、液晶事業のポートフォリオを転換し、車載、IA、医療など社会インフラなどを中心としたBtoBtoB市場に注力して、その比重を拡大していく。スマートフォンやタブレット、液晶TVなどのコンシューマ製品扱うBtoBtoC市場は、低価格志向が強く、サイクルタイムが短い。さらに市場の変動が激しく、急激な売価ダウンのリスクが高い。これに対し、BtoBtoB市場はカスタム性が強く、品質力、技術力、サポート力などが必要で、強みが生きるとシャープでは考えており、「液晶事業のBtoBtoB構成比を2014年度の15%から、2021年度には40%まで引き上げたい」(方志氏)とした。

また、BtoBtoB市場の中でも、特に注力する分野として車載を挙げた。バックミラーにディスプレイを内蔵した製品や、超低反射ディスプレイ、インパネ向けにフリーフォームディスプレイ(FFD)、高感度タッチパネルやジェスチャセンサ、さらにディスプレイ技術以外ではカメラを生かしたビューシステムなど、次世代技術をユーザーに提案し普及を目指すとしている。

昨年6月に発表されたFFD。IGZO技術のTFT特性を生かし、ゲートドライバを画素領域に形成して、ゲート信号線を画面内側から外側に向けて駆動させることで、さまざまな形状を可能にした

「2015 international CES」で初公開されたFFD。従来技術では3辺を狭額縁化できても、1辺にソースドライバを実装する必要があった。これに対し、同製品は完全な円形になっている。技術の詳細は非公開

曲面ディスプレイは、車載デザインとの調和やドライバーが視線を動かした時にも視認距離が変わらないことなどから求められている。同試作品はガラス基板を使用している。フィルムを使った曲面ディスプレイの試作品もあるが、課題が多いとのこと

車載向け超低反射液晶技術。欧州など西日の強い地域では直射日光があたっても視認性が確保できるディスプレイが求められる。そこで、最表面の反射光を従来のAGAR処理で低減し、さらに液晶セル内の構造を工夫することで内部反射を抑制した。これにより、反射率0.4%を実現している

ミラーディスプレイ。電源オフ時は鏡として、オン時にはディスプレイとして機能する。従来の金属ミラーや誘電体ミラーなどのハーフミラーは、液晶からの出射光の一部しか通さないのでディスプレイの明るさが犠牲になっていた。今回の製品は反射型偏光板を採用し、透過率90%を実現。液晶からの出射光をほぼすべて通す

高感度タッチパネルコントローラ技術。独自回路により、ディスプレイからのノイズを低減し、高いSN比を実現。既存の静電容量方式タッチパネルで使用可能で、サイズも80型まで対応できる。5mmの厚いカバーガラスの上からでも、厚手の手袋をはめたままでタッチパネル操作が可能

LCD+3Dモーションセンサ。ディスプレイに触れずに手前で指を動かすことで操作できる。独自のオプトデバイスの光学シミュレーションと小型パッケージ技術に加え、高速/高精度の検知アルゴリズム、光学パッケージ技術により開発したという

ディスプレイ以外の車載向け技術も発表した。超広角レンズ搭載の車載カメラユニットは、1/2.7型100万画素CMOSイメージセンサを搭載する他、超広角/高解像度レンズにより、水平画角190度を実現している。また、近赤外LEDを利用することで暗闇での撮影も可能。動作温度範囲は-40℃~85℃

車載向け安全走行アシスト360度フリービューシステムのデモ映像。高品位映像処理機能により、周囲360度の自然な画像表示が可能。今後、歩行者検出やサラウンドビューによる警報、車線検出などの開発に取り組み、2018年頃に実用化させる予定