東京都医学総合研究所(都医学研)は2月6日、季節性インフルエンザA型およびB型ウイルスを同時かつ簡易に高感度で検出できる2種類のイムノクロマトを開発したと発表した。
同成果は同研究所の芝崎太 参事研究員らの研究グループによるもので、2月4日付(現地時間)の米科学誌「PLOS ONE」掲載された。
毎年流行するH1N1ウイルスによるA型やB型の季節性インフルエンザのほか、新型インフルエンザとして2009年に世界的な流行を起こしたブタ由来新型H1N1に加え、鳥インフルエンザではH5N1ウイルスおよびH5N2ウイルス、今年中国で発症が確認されたH7N9ウイルスが報告されている。
季節性インフルエンザは簡易型のイムノクロマト法により10~15分程度で診断が可能だが、検出感度が余りよくないため、発症直後(1~2日以内)などの早期には陰性になることが多く、24時間以内の早期に治療薬を投与することが難しい。
また、H7N9ウイルスは人から人への感染例が報告され、H5N1ウイルスでは全世界で500名以上の感染し、60%近い致死率を示すなどパンデミックが危惧されている。このため、H変異株すべてを検査可能な高感度で簡易な検査法の確立が望まれていた。
今回開発されたのは、従来と同じ手順、同じ時間内で100倍以上の高感度で季節性A型およびB型インフルエンザウイルスを検出できる高感度蛍光イムノクロマトとその検出機器。従来の金コロイドを使用する方法に代え、蛍光色素を抗体に結合させた蛍光イムノクロマト法を独自に考案し、この蛍光色素を高感度に測定できる小型検出器を開発した。臨床実験では発症12時間以内に97%の患者で陽性判定をすることができ、中には発症3時間以内の患者でも検出可能だったという。
同じく新開発されたカラーイムノクロマトは従来品より10倍の感度でありながら、測定器が不要なため、小さなクリニックでも導入ハードルが低く、生産コストが下がれば将来的にはアジア各国などインフルエンザ発生地区において初期診断に用いることもできる。
北海道大学の迫田義博 教授との共同研究で行った検定では、両方のイムノクロマトで2009年の新型を含むH1N1型をはじめとする、H2、H3、H5N1、H7、H9の各亜型株を全て検出することに成功。今後、季節性インフルエンザ以外のインフルエンザウイルスの早期発見および治療・囲い込みにも大きく寄与することが期待される。
この2つのイムノクロマトは2014年6月に厚生労働省の認可を得ており、カラーイムノクロマトはすでに2014年12月より販売されている。現在、高感度蛍光イムノクロマトの早期販売に向けた製造が進められている。