「タブレットやモバイル、IoTといったトレンドを受け、高速回線に対するニーズが急増している。家庭内ネットワークはもとより、回線を提供するキャリアやプロバイダー、SOHO、企業が高速で品質のよい製品を求めるようになった。実際、当社の10Gbitイーサネットに対応したLANスイッチは昨年、90%以上のシェアを獲得した」
米NETGEARのオペレーションズ&サポート担当シニアバイスプレジデント、マイケル・ファルコン(Michael Falcon)氏は、近年のネットワークに対するトレンドについてそう話す。 たとえば、米国のコンシューマ市場では100ドルを切る安価なルーターよりも、11ac(IEEE802.11ac)に対応し、高速で高品質な無線通信ができる200ドルを超える価格帯のルーターが売れるようになってきたという。
「11b/gから11nへの切り替えは何年もかけてゆっくりと進んだおかげで、当社の54Mbpsに対応した無線LANルーターはロングセラーになった。だが、ハイエンド機種に対するニーズを見ると11acへの切り替えはおそらく2~3年しかかからない。今はまさにトレンドが大きく変わっているところだ」(ファルコン氏)
同氏によれば、こうしたトレンドの変化は、エンタープライズ市場でも同様だという。ビデオ会議やリモート接続環境など、広帯域で安定した品質の回線に対するニーズが増え、10Gbitイーサネットに対応したスイッチや無線機器が好調だ。また、40Gbitに対するニーズも増えてきていることから、同社では今後、タイミングをみながら40Gbitイーサネットに対応したスイッチを提供していくという。
NETGEARの2014年度の業績は、ワールドワイドで8~10%増の成長率を達成する見込みだ。2013年は7.7%の成長率を達成しており、トレンドを見据えてニーズに合った製品を投入する同社の戦略がうまく回っているかたちだ。
国内市場は引き続き2ケタ増続く
米NETGEARの創立者で、代表取締役会長兼CEOでもあるパトリック・ロー氏は、2014年4月に来日した際に「10Gbitスイッチ」「仮想化」「BYOD」「IoT」に対するニーズが高まっていくと説明していた。ファルコン氏によると、2015年度もこの傾向は変わらないという。
また、国内市場についても、基本的には海外とほぼ同じトレンドを描くとする。ただ、米国市場がコンテンツに起因して高速回線へのニーズが高まってきたのに対し、ブロードバンド回線がすでに普及した日本では、やや製品の受け入れられ方が異なっていると話す。
「米国では高速な無線機器へのニーズがまず高まった。だが、もともと有線で高速に、且つ安定した回線を利用できる日本では、『わざわざ高速な無線を使わなくてもいい』という考えが続いていた。しかしその考えも過渡期にあり、これから日本でも高速な無線のニーズが急増すると見ている」(ファルコン氏)
コンシューマ向け無線ルーターの低価格化が進んでいるが、ファルコン氏の言うように、国内でも高品質な製品へのニーズは少しずつ高まりつつある。
2013年の国内販売は、ホーム向けの無線機器などが好調で、前年比2ケタ増を果たした。2014年の実績は、2013年よりもさらに伸び、成長率は20%を超える見込みだ。高価格帯ルーターのニーズが増える2015年以降は、さらに成長することが見込まれている。
ワイヤレスカメラやモバイルWi-Fiルーターに新規参入予定
そんな国内市場で、同社が新たな展開を図るのが、ホーム向けの高速無線ルーター、モバイルWi-Fiルーター、ワイヤレスカメラだ。
高速無線ルーターには、802.11acに対応し、5GHz帯で433Mbps×4の最大1733Mbps、2.4GHz帯で200Mbpsx3の最大600Mbpsのデュアルバンドに対応した「Nighthawk X4 ギガビットルーター R7500」がある。2015年はこの上位機種も提供する予定だという。
モバイルWi-Fiルーターは、持ち運びができる充電式の専用端末だ。PCやタブレット、スマートフォンをテザリングで接続させて利用できる。LTEを利用した高速接続が可能だ。同社にとっては新規参入になる分野だが、ファルコン氏は、その狙いについて、次のように話す。
「モバイル機器の無線接続環境は、ラストフロンティアだ。スマートフォンのテザリング機能で十分と思うかもしれないが、これらはデータ転送に最適化されているわけではない。これから伸びる高速回線のニーズに応えるには、テザリング専用の端末が欠かせない」(ファルコン氏)
モバイルWi-Fiルーターとなるとデータ通信に特化したマーケットであることもあり、現在、キャリアやプロバイダーと話し合いを進めている段階だという。
最後のワイヤレスカメラも、新しい市場を開拓する製品だ。もともと米国ではWebカメラを使って、遠隔地から自宅のペットやベビーシッターにまかせた赤ちゃんなどを見守ることが広く行われている。新製品のカメラは、磁石式でどこにでも簡単に設置でき、スマートフォンやPCと連携して、ライブカメラを簡単に設置できる製品になっている。
動画のライブ配信やリモートワークなど、国内でもこうしたカメラに対するニーズは高まっており、タイミングを見て、投入していく予定だ。
インタビューの終わりで、ファルコン氏は「ホーム向けを中心として、ビジネス向けにも引き続き力をいれていく。モバイルのネットワークから企業内ネットワークまで幅広く製品を提供できることが我々の強みの1つ。特に国内は、この3製品で市場をリードしていきたい」と強調した。