4月上旬、米NETGEARの創立者で、代表取締役会長兼CEOでもあるパトリック・ロー氏が来日した。そこで、同氏にNETGEARの業績や最近のトレンドについて話を聞いた。

米NETGEAR 代表取締役会長兼CEO パトリック・ロー氏

冒頭、同氏は現在のトレンドについて、「今のトレンドは、10Gスイッチと仮想化、それとBYODです。この12カ月において、日本市場はこれらすべての成長率が高く、特に10Gスイッチは、前年比で7倍の成長を達成しました。10Gスイッチにおいて、我々は国内でもっとも幅広いラインナップを持っており、下は8ポートの『XS708E』から、上は10スロットシャーシの『XCM8800シリーズ』まであります。10Gの帯域があれば、仮想化やハイエンドストレージもサポートすることができます。昨年の第1四半期に、我々はReadyNAS 716Xと4220Xの販売を開始しましたが、これらは10Gのネットワークをサポートしています。716Xであれば8ポートのスイッチを利用し、4220Xならハイエンドのレイヤー3スイッチに接続するなど、幅広い用途に対応できます」と説明。幅広いラインナップを背景に、同社の業績が好調である点をアピールした。

エンタープライズ領域では、国内でも大規模な事例が出始めているようだ。

「我々はエンタープライズ領域のストレージとして、ReadyDATAシリーズを持っており、VMwareやマイクロソフトのHyper-Vなど、仮想化システムで利用できます。日本でも先日、ある自治体が10台のReadyDATA5200を使って、200TBのシステムを構築しました。すべて10Gのネットワークで接続されています」と紹介した。

同社の製品の強みについてパトリック・ロー氏は、「大規模な事例は、中国、シンガポール、インドでもたくさんあります。我々の強みは、最先端規格の製品を、安価に提供できる点です。そのため、同じ予算でも、他社よりも1ランク上の性能の製品を使ってシステムを構築することができます。しかも、設定はGUIで行えますので、導入も容易です」と語った。

同社のストレージの特徴としては、ReadyCLOUDというプライベートクラウドストレージを構築する機能をサポートしている点があるという。これにより、ReadyNASと、NETGEARのクラウドサービスであるReadyCLOUDを組み合わせてプライベートクラウドストレージを構築できる。そのため、クライアントがWindowsでもMacでも、iOSであっても同じファイルに対して「どこからでも」アクセスできる。

今後はパートナーを拡大

国内の10G市場について、パトリック・ロー氏は、「弊社の10G製品は大手オンライン販売サイトでよく売れています。我々の製品の良さをわかっているユーザーが購入されているのだと思います。10Gはもはや、アーリーアダプターの向けの規格ではなく、データ量の増大に対応するために必要不可欠な製品となっています。先日も九州でセミナーを行いましたが、高いニーズがありました。ECで10ギガスイッチをユーザー企業が直接購入するくらい、現場では必要とされているので、このニーズを広くカバーしていくため、販売パートナーを増やしていきたいと思っています」語った。

今後積極的に新製品を投入

パトリック・ロー氏によれば、BYODは海外では進んでいるが、国内ではこれからという状況だという。ただ、将来を見越して同社では今後、積極的に新製品を投入する予定だ。

「弊社のワイヤレス製品は、日本ではまだまだ普及は少ないですが、海外ではホテル、病院、学校、政府機関などで多く採用されています。今年から来年に向け、ワイヤレス製品のシェア拡大を図っていきたいと思います。我々は2009年からWi-FiのAPコントーラの販売を開始しました。APコントローラの国内市場はこれからという状況です。ただ、来月には機能を拡張した新しいWC7600を投入します。また、『MU-MIMO(Multi User MIMO)』に対応した製品を出す予定もあります。MIMOは、複数のアンテナを使って広帯域を確保しようというものですが、これまでは、一人のユーザーだけが利用できました。来年の初めにリリースする予定の新製品では、複数ユーザーが同時に広帯域を活用できるMU-MINOに対応する予定です」(パトリック・ロー氏)

そのほか、10Gスイッチと仮想化、BYOD以外で同社が注目しているのは、「Internet of Things(IOT)」だという。

「IOTの領域では、Wi-Fiと携帯用の4Gの両方をサポートすることが必要です。これまでこれらは別々の機器でしたが、今後、両方をサポートした製品を出す予定です。そうなれば、WC7600の新機能が活きて来ます。4Gは自動車などでも利用されており、新たな用途での利用が増えて来るでしょう。すでに我々は、海外において、世界でもっとも高速な4G対応ルータを発表しています」(パトリック・ロー氏)

また、中国においては、RFIDとWi-Fiを組み合わせた新しいビジネスの取り組みも始めている。これはまだ実証実験の段階だが、病院での利用を想定したもので、患者さん一人一人にICタグを身につけてもらい、Wi-Fiネットワークを通して管理するものだ。これまでにない新たな取り組みなので、今後、日本で展開することを期待したい。