「モバイルファースト」が叫ばれて久しい昨今、その先陣を切るGoogleがアジア太平洋地域におけるモバイル戦略を紹介するプレスイベント「Google The Mobile First World」を台湾・台北で開催している。同イベントではAndroidの最新バージョンであるAndroid 5.0(Lollipop)を積極的に紹介している。
Android 5.0では、「マテリアルデザイン」と呼ばれる様々なデバイスに共通して利用されるデザイン思想にAndroidを一新。単なるユーザーインタフェースだけではなく、アニメーションなども細部まで作り込んでいることが特徴だ。なお、この新バージョンについてはセキュリティも大きな強化を果たしている(関連記事:「スマホにロックをかける人はわずか半数 - GoogleのAndroidセキュリティ戦略」)。
Windows 8に端を発し、iOS 7にも採用されたフラットデザインはAndroid 4.4のKitKat世代から導入されていたものの、それを更に推し進めたGoogle。そしてこのUIデザインを端末にも取り入れたものが、10月に同社が発表した「Nexus 6」と「Nexus 9」だ。両デバイスが公開されたのはアジアで初めてとなる。
マテリアルデザインと呼ばれるデザイン思想は、今後すべてのデバイスで統一され導入されていく。ユーザー体験の統一によって、満足度の向上を図る。アニメーションも従来のAndroidが簡素であったのに対して、大幅にリッチ化されている |
読者の方はご存知だろうが、NexusシリーズはGoogleが「リードデバイス」として提供する端末で、開発者がアプリ開発を行なう上でベースになるとも言うべきデバイスだ。もちろん、Android OSはデバイスベンダー各社が自由にカスタマイズできるため、Nexusで動作確認を行なったとしても全ての端末で問題が起こらないというわけではない。
しかし、OSの高機能化とともに、「デバイスベンダーがAndroidをいじらずとも、サクサク動作する」といった環境が整いつつあり、以前ほど断片化がなくなってきているのも事実だ。そういった意味でNexusシリーズをベースとした開発は今後もより一層加速する可能性がある。
また、日本国内の開発者であってもグローバル展開を視野に入れている場合、Android 2.3のGingerbredへの対策も重要視されてきた。ただ、Android 4.4 KitKatでRAMメモリのOS使用量を大幅に削減するといった取り組みもあり、Googleとしても積極的な巻き取り施策を行なっている。
その巻き取り施策に近い形で発表された取り組みが「Android One」だ。Googleが特定のデバイスベンダーと提携し、インドやフィリピンといった新興国に限定して格安のAndroidスマートフォンを提供するという取り組みになる。これは、日本のスマートフォンユーザーにしてみれば関係のない話だが、アプリ開発者にとっては重要な話だ。
追って紹介するGoogle 会長 エリック・シュミット氏のオープニングスピーチでは、シュミット氏がアジア市場の伸びについて言及するなど、アジア市場の伸びはめざましい。アジア市場は人口が多く、潜在的なモバイルプラットフォームに対するニーズが高い。今後の収益の柱として新興国に先鞭を打つ意味でも、Androidの拡充は開発者にとって大きな意味を持つわけだ。
また、モバイルの世界でホットな話題と言えば「ウェアラブルデバイス」だろう。Googleがウェアラブルデバイス向けプラットフォーム「Android Wear」を発表しているが、6月に発表されたLGとサムスンの2製品が展示されていた。
こちらの2製品は初期の発表に過ぎず、現在では「Moto 360」や「LG G Watch R」といった従来の腕時計と同じ丸形のデバイスも発表されている。ウェアラブルデバイスは市場が立ち上がったとはいいがたく、Appleが9月に発表した「Apple Watch」についても、まだ見通しが定かではないというのが正直なところだろう。
しかし、先ほどと同じくエリック・シュミット氏がウェアラブルデバイスについて「身体をモニタリングする」ものとして、拡がる可能性を示しているように、現状のまま市場がしぼんでいく悲しい未来が待っているわけではないはずだ。デバイスベンダーの競争が進めば、そのプラットフォームを提供するGoogleを通して、開発者が飛躍する未来も十分に描けると言えよう。