9月16日~18日の3日間にわたり、東京都・有楽町にある東京国際フォーラムにて「ad:tech Tokyo 2014(アドテック東京)」が開催された。17日に行われたキーノートでは、ヤフーでCEOを務める宮坂学氏が登壇。「’脱皮’のその先へ」と題した講演を行った。
ヤフー CEO 宮坂 学氏 |
同氏は冒頭、「アドテックには相応しくないかもしれないけれど」と前置きをして、同社が東日本大震災発生後から実施する復興支援について触れた。
同社は2011年12月14日、インターネットを活用して、被災地の人たちが自ら売ることのできる仕組みを作り、新たな地方活性化モデルを構築することを目的に、eコマース事業「復興デパートメント」をリリース。「被災地で漁業や農業などを行う生産者を支援したいという想いで取り組んできた。オープン当初、このサービスを利用する生産者は30ほどであったが、今では100以上だ」という。
「総務省の統計では、日本人の約9割がインターネットを利用しているが、ビジネスの場面ではどうだろうか。(復興支援を通じて)現地を訪れた際に、広告を出したりクーポンを出したりなど、ビジネスでインターネットを活用する人は、まだまだ少ないなという実感があった」(宮坂氏)
日本には約500万以上の企業が存在するが、同氏によると、同社の提供するYahoo!JAPAN ショッピングなどのeコマースや、Yahoo!プロモーション広告などのインターネット広告に登録のある企業アカウント数は、約20万に留まるという。この現状を、「インターネットのビジネス利用は、(イノベーション曲線でいうと)ようやくアーリーアダプターに到達したと考えられるのでは」とした。
同社の収益の約7割を占める広告事業は、インターネットを利用してビジネスを拡大する機会を提供する。宮坂氏は、「今後、より多くの人・企業にインターネット広告商品を利用してもらうためには、『難しい部分をどのように簡単にするか』『不安をどのように払拭するのか』の2つが最も重要な課題だ」と語る。
同課題を解決する糸口として、テクノロジーの活用やクリエイティブ手法(アート)の発展、広告審査体制(安全)への取り組みなどを挙げた。
検索と3Dプリンタを融合させた「さわれる検索」や、アドテック東京にて公開したSNS連動型バーチャルジェットコースター「ヤフー トレンドコースター」など新たな技術の活用や、「飛び出す広告やリーチ力に長けた広告」などユーザーを楽しませるための表現手法、広告出稿によるクライアントのブランド損傷を防ぐ「24時間有人審査体制」や「配信先の審査」など広告運用のサポートなどを事例として紹介する。
しかし、これらの取り組みはまだ始まったばかりに過ぎず、同社は今後、「テクノロジー」と「アート」「安心・安全」を軸に、新たな進化を目指す考えだ。
検索と3Dプリンタを融合させた「さわれる検索」 |
SNS連動型バーチャルジェットコースター「ヤフー トレンドコースター」を公開する同社ブースの様子。公開されたコースターは、体験待ち時間50分となるなど、賑わいを見せた |
同氏は2年前となる2012年10月31日、同じくアドテック東京のキーノートにて、「スマートフォンファースト」を今後の方針として掲げた。今年度は、同社の提供するスマートフォンアプリのダウンロード数が約2億となったほか、Yahoo!JAPANのデバイス別利用数では、初めて、スマートフォン利用が最も多い結果となった。
「パソコンからスマートフォンへ、そして今後はIoTへと、さまざまなデバイスにインターネットが繋がっていくだろう。しかし、全ての人が新たな技術を使いこなせるのだろうか。個人の利用であってもビジネスでの利用であっても、万人が容易に使えるようになった時に、そのテクノロジーが社会を変えたと言うことができる」(宮坂氏)
同氏は、水道や電気を例に挙げ、「これらと同様に、インターネットリテラシーの低い人であっても、簡単に使いこなせるサービスや広告商品を提供していくことが重要なこと」だとし、「ヤフーの次なるステージ」を示した。