BI・データ活用ソリューション「Dr.Sum EA」やBI・ダッシュボード「MotionBoard」などを提供するウイングアーク1stが、今年も名古屋・大阪・東京の3都市で情報活用セミナー「夏の情活塾」を開催した。ここでは、7月31日に秋葉原の富士ソフト アキバプラザ アキバホールで開催されたセミナーから、株式会社JPS 代表取締役 平下治氏による特別講演「過渡期を迎えるデータ市場 企業が今目を向けるべき外部データとその活用シナリオとは」の内容を紹介しよう。
ウイングアーク1stは、創業10周年の節目を迎え、10回目となるウイングアークフォーラム 2014を開催します。ウイングアークフォーラム 2014の詳細はこちら |
ピンポイントマーケティングに対応するデータをいかに集めるか
株式会社JPS 代表取締役 平下治氏 |
平下氏は35年もの長きに渡り、ビジネス分野におけるGIS(Geographic Information System:地理情報システム)の運用コンサルタント業務に従事してきた人物だ。GIS関連政府委員、各種団体常任講師、GIS学会理事などを歴任しているほか、GISに関連する多数の著書や専門誌への投稿、さらには国内外で数多くの講演も行ってきた。
平下氏はまず、日本におけるマーケティング手法の変化について「1990年までの『マスマーケティング』、1990年~2010年の『エリアマーケティング』を経て、現在は『ピンポイントマーケティング』へと移行しています」と語る。バブル崩壊後にエリアマーケティングの必要性を感じて国内外の低価格なGISが普及しはじめ、現在ではより小さい単位(ピンポイント)でのきめ細かいマーケティングが求められるようになった。そこで、このピンポイントマーケティングに対応するデータをいかに集めるかが重要なのである。
エリアマーケティングにおいてGISは"魚群探知機"
平下氏はエリアマーケティングで重要なのは「大海原のどこに糸を垂らせば鯛が釣れるか」を知ることだという。つまり、船でいう魚群探知機が、エリアマーケティングにおけるGISに相当するわけだ。ただし、GISを使いこなすには経験や勘が必要になる。経験や勘でGISのデータを絞り込んでこそ、成果につなげることができるという。
エリアマーケティングで魚群情報に相当するのは「エリアマーケティングコンテンツ」だ。代表的なものでは、国勢調査/家計調査/労働力調査/住宅・土地統計調査/家計消費状況調査などを含む総務省統計局の実施調査データが挙げられる。また、民間においては所得/貯蓄/将来推計人口/流動人口統計/平均地価といった各種統計データ、そして小売店/スーパーマーケット/ショッピングセンターをはじめとした各種ポイントデータが利用できる。これらのデータをGISに取り込み、統計を地図で"読む"ことで、現状の把握と"どこ"に魚群があるかを導き出せるのである。
作り出したベースデータに自社のデータを連携
続いて紹介したのは、統計では存在していないデータを作り出す方法だ。たとえば「贅沢な県はどこか」を知りたくても、"贅沢"という統計データは存在しない。しかし、クリーニングやタクシー、旅行に関する出費が多い人を"贅沢"と仮定し、このようなプロフィールを有する人が多く住む県を"贅沢な県"と定義することで導き出すことができる。"オシャレ"ならば洋服代/化粧代/美容院代などから作り出すという具合だ。
さらに最新のデータとして、日本人のライフスタイルを作成する方法も解説した。作成に使用した主な統計データは、収入/持ち家/年齢構成/家族構成など。これらを使い、日本人のライフスタイルを12のソーシャルグループと36のライフスタイルに分類し、それぞれの特徴や分布を導き出すのである。
実ビジネスにおいて、エリアマーケティングを活用するためには、こうして整備された各種データに自社のデータを取り込み連携させる必要がある。たとえば百貨店のインテリア販促計画でカード会員からターゲット顧客を見つけ出すという例では、まず店舗位置と全顧客分布図を重ね合わせ、エリア内で顧客構成比および世帯構成比を比較する。ここから市場規模が大きいターゲットクラスターを絞り込むのである。さらに、大きな家に住んでいる人ほどインテリア購入需要が高いことから、第一・第二ターゲット顧客の抽出条件として家屋面積の情報を活用するわけだ。
もうひとつの例として、ソーラーパネルの販促計画が挙げられた。どの地域にターゲットとなる住宅が多いのか、ピンポイントで営業先を知るには、ターゲットクラスター/一戸建て建物数/40~65歳人口/世帯人数4人以上/年収700万円以上世帯数といった情報で、ターゲットを絞り込むことができる。
これらの分析によってより明確にターゲットを浮かび上がらせることで、これまでできなかった効果の高いアプローチを実現できるケースは多いだろう。
マーケティングでの"気付き"は企業の"築き"への道
ビジネスGISの役割は、ベースとなるデータの上にさまざまな追加データを載せてブラッシュアップし、地図上への表示出力を通じて意思決定者に伝えることにある。
いつでも、すぐに見たい地域の情報を、地図上でピンポイントに把握するためには、判断材料の提供、分析、検討、戦略立案、計画書作成、判断、決定、実施、検証という流れが必要だ。そしてGISマーケティングの"成功"とは、GISを活用して"商売が現状より上手くいく"ことを意味している。
「GISマーケティングの鍵は、いかに各種データを集め、いかに整備するかにかかっています」と語る平下氏。収集・整備したデータを"In(入力)+Formation(組み合わせ)"によって"儲けるための情報(Information)"に変える。その情報は新たな気付きであり「マーケティングでの"気付き"は、企業の"築き"への道なのです」と、平下氏は講演を締めくくった。