東京大学は7月17日、リチウムイオン内包フラーレン(Li+@C60)の反応性を定量的に測定したと発表した。
同成果は、同大大学院 理学系研究科の松尾豊特任教授、大阪大学大学院 工学研究科の小久保研准教授、名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科の青柳忍准教授らによるもの。詳細は、「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載された。
測定の結果、リチウムイオンが入っていない通常のフラーレンC60と比較して、ディールスアルダー反応の速度が約2400倍速くなるという、リチウムイオンの"分子内封入触媒効果"が明らかになった。また、化学工業、医薬品合成にも用いられるディールスアルダー反応は、立体的な効果と電子的な効果により反応性が左右されるが、今回の反応において、通常のフラーレンとリチウムイオン内包フラーレンは同じ外形・体積をもつため立体的な効果に差はなく、内包されたリチウムイオンの電子的効果のみを議論することができる。これらの研究成果は、この反応の理解をより深めることにつながり、新しい触媒設計の指針となりえる。また、生成物として得られるリチウムイオン内包フラーレン誘導体は、他のフラーレンを凌駕する有機機能性材料として、今後、有機太陽電池、リチウム電池、キャパシタなどの電池材料への応用が期待されるとコメントしている。