奥泉 輝(おくいずみ あきら)
文房具カフェ店長。祖父が創業した紙製品・文房具の卸売会社を兄と運営するなか、人と文房具が出会うことで創造的な何かが生まれる場所というコンセプトのもと、2012年より同店舗を展開。同年より現職

大人のたしなみとして1本は持っておきたい文房具といえば、万年筆。前回は「持ち歩きたくなるデザインのリーズナブル万年筆まとめ」として、初心者でも気軽に持てる1,000円~2,000円で入手可能な万年筆を紹介した。

とはいえ、これだけの低価格でも買えるとあっては、「じゃあ、高い万年筆って何が優れていて、どこが違うの?」と思った方もいるのではないだろうか。そこで、前回に引き続き、東京都・渋谷にある文房具をコンセプトにしたカフェ&ショップ「文房具カフェ」の店長・奥泉輝(おくいずみあきら)さんに、万年筆の深~い話を伺った。

高級万年筆の代表格である"2大ハイエンド万年筆"

奥泉さんいわく、まず知っておいてほしいのが"2大ハイエンド万年筆"ということだ。なお、今回は限定品・装飾品は除き、定番ラインに限ってセレクションし、解説を進めていく。

■モンブラン「マイスターシュテュック 149」(希望小売価格10万1,520円)

高級万年筆の代名詞と言える「モンブラン」。その中でも、黒く、太く、大きく、いわゆる万年筆の"王道"のデザインとなっているのが「マイシュターシュテック」だ。モンブランの万年筆であることを示す、キャップにしるされた「ホワイトスター」は、万年筆に憧れを抱く全ての人にとって、ステータスともなる証しだ。

奥泉さんは、「数々の作家に愛され、国際的な調印式などにもしばしば登場している万年筆ですね。ペン先はもちろん18金。ケネディ大統領もモンブランの万年筆を愛用していたようです」と、この製品が持つ格式を分かりやすく語ってくれた。

■ペリカン「スーベレーンM1000」(希望小売価格7万5,600円)

前述のマイスターシュテュックと双璧をなすドイツ万年筆の傑作が、この「スーベレーンM1000」。ペン先がとても柔らかく繊細で、モンブランとはまた違う書き味が楽しめる。

奥泉さんいわく、「職人が複雑な工程でつくり上げる、原料のコットンを何重にも加工し板に仕上げた独特のしま模様の軸が特徴的」とのこと。また、「書き味がほんとうに滑らかで「書く」ことを楽しめる1本だと思います。ペリカンのくちばしをモチーフにしたクリップも愛らしいですよ」と、その機能とデザイン両方への信頼が垣間見えるコメントを寄せてくれた。

それぞれの個性が異なるので、比較することでどちらも欲しくなってきてしまうが、2本合わせるとなんともすごいお値段に……悩ましいところではある。総括として、奥泉さんは「両製品とも重くて大きいため、(前回紹介した低価格帯万年筆とは異なり)持ち運んで使うにはどちらかというと不向きですね。書斎でじっくり腰を据えて、ゆったりとした時間の中で便せんや原稿用紙に向かう……。そんな環境ごと欲しくなるような、ぜいたくな逸品たちです」とその魅力を解説した。