北海道むかわ町立穂別博物館は7月1日、穂別地域の白亜紀末(マーストリヒチアン期最前期:約7200万年前)の地層(蝦夷層群函淵層)から、アナゴードリセラス属アンモナイトの新種が発見されたことを発表した。

同成果の詳細は、国立科学博物館の重田康成 研究主幹、穂別博物館 学芸員の西村智弘氏らによる論文として、日本古生物学会欧文誌「Paleontologival Research」に掲載され、新種アンモナイトは「Anagaudryceras compressum Shigeta et Nishimura sp. nov.(アナゴードリセラス・コンプレッサム)」と命名された。

アナゴードリセラス属アンモナイトは、白亜紀中ごろのアルビアン期中期(約1億500万年前)から、白亜紀末のマーストリヒチアン期(約6600万年前)にかけて世界中の地層で発見されており、殻の直径が約10cmを超す種類が多く、特に成長後期の殻にS字状の肋(殻装飾の凹凸)が発達することが多いことが知られている。

日本でも北海道を含む北西太平洋地域では良く知られたアンモナイトの1つであるが、カンパニアン期後期とそれに続くマーストリヒチアン期前期のものは、産出例が少ないため、ほとんど研究が行われてこなかった。むかわ町の穂別地域はマーストリヒチアン期前期の地層が広く分布しており、今回の研究で用いられた標本も同地域から産出されたもので、これを世界中の各種標本と比較したところ、どの種よりも螺管幅が薄い点がほかのどの標本とも異なり、新種であることが判明したという。

また、同アンモナイトが北西太平洋地域では唯一の最前期マーストリヒチアン期前期のアナゴードリセラス属であることも判明したほか、さらなる研究から、成長後期の殻に、低いバンド状の肋が発達する特長が、マーストリヒチアン期後期のアナゴードリセラス・マツモトイと共通しており、アナゴードリセラス・コンプレッサムが北西太平洋地域で進化したおのがアナゴードリセラス・マツモトイであるとの考えに至ったとする。

なお研究グループでは、今後の研究から、当該時代の海洋古生物の起源や分布域変遷などの詳細が分かりことが期待され、最終的には当時の海洋環境の変遷などにつながることが期待できるとコメントしている。

アナゴードリセラス・コンプレッサムの完模式標本