京都大学(京大)は6月23日、野生のチンパンジーが3つの異なる道具をセットとして用いてハリナシバチの蜂蜜を採取していることを観察することに成功したほか、倒木の洞に隠れているマングースを追い出して捕獲するために、蜂蜜採集と同じような道具を用いていることも観察することに成功したと発表した。

同成果は、同大理学研究科の山極寿一 教授らによるもの。詳細は国際学術誌「PRIMATES」に掲載された。

野生チンパンジーが道具を作り、その使い方も含めて他の仲間に伝達する能力があることはこれまでの研究から知られていたが、これまではいずれも1つの目的のために製作され、その目的のみに用いられると考えられてきた。

また、3~5個の異なる道具をセットとして用いる行動も中央アフリカだけだが確認されていたが、この場合も目的は1つであったという。

今回、研究グループは、ガボン共和国ムカラバ国立公園において、野生のチンパンジーが、3つの異なる道具をセットとして用いて、複数の用途で活用していることを観察することに成功したという。この発見は、チンパンジーが蜂蜜採取と狩猟という異なる2つの目的に対し、複数の道具を活用して達成するという柔軟な思考能力を持つことを示唆していると研究グループでは説明しており、おそらく250万年前の最初の石器を作った人類の祖先も、そうした柔軟な思考能力を有していたことを示すものだとする。

また、今回の発見から、人類の祖先が、現在考えられている時代よりも古くから複数の用途を持つ道具を活用していたことが示されたともコメントしている。

野生のチンパンジー (C)京都大学