分子科学研究所(IMS)と総合研究大学院大学(総研大)は、人工光合成などの反応の引き金となる光励起状態の分子について、電子のやりとりのし易さを直接測定することに成功したと発表した。

同成果は、IMSの正岡重行准教授、総研大 物理科学研究科5年一貫博士課程学生の深津亜里紗氏らによるもの。詳細は、「Scientific Reports」に掲載された。

次世代のエネルギー生産技術として、人工光合成などの光物質変換反応系が近年注目されている。これらの反応系では、物質が光を吸収することによって生じる高いエネルギー状態(光励起状態)が、物質を変換する反応を引き起こす。その際、光励起状態における電子のやりとりのし易さ(酸化還元電位)が反応の進行を決定づける。従って、光励起状態の酸化還元電位を知ることは光物質変換反応系のしくみを理解し、より優れた反応系を構築するために極めて重要である。しかし、従来、光励起状態の酸化還元電位を直接求めることは困難とされてきた。研究グループは、従来行われてきた電気化学測定法にわずかな工夫を加えることで、光励起分子の酸化還元電位を簡便に直接観測することに成功した。

光物質変換反応の模式図

今後、さらなる検証を経て、今回の研究で提案する光電気化学測定法が確立されれば、光触媒探索の幅が飛躍的に広がり、人工光合成をはじめとしたエネルギー変換反応の分野はもちろん、より広い範囲で光反応化学に大きな影響を与えることが期待されるとコメントしている。