5月15日と16日の2日間、東京国際フォーラムで「富士通フォーラム 2014」が開催された。「ヒューマン・セントリック・イノベーション」がテーマに掲げられた今年は、72の展示デモと、約90におよぶ講演/セッションが設けられ、多くの企業ユーザーが詰めかけた。

「イノベーションを支えるICT」と題したエリアでは、ICT基盤の最適化を実現する最新プラットフォームが、デモを交えながら紹介された。ここでは2013年11月に販売開始されたディスクストレージシステム「ETERNUS DX S3 series」を中心に、ICT基盤を最適化する富士通のプラットフォームを紹介したい。

富士通フォーラム2014の様子。展示会場にはたくさんの企業ユーザーが詰めかけた

富士通フォーラム 2014 レポート

「富士通フォーラム 2014」のレポートを以下にも掲載しております。併せてご覧ください。

「運用の自動化」や「事業の継続性向上」による安定したシステム稼働を実現

コスト削減やITガバナンスの強化、システム運用管理の効率化といった観点から、サーバ仮想化環境を活用したICT基盤へのニーズは高まっている。しかし、サーバ仮想化環境を導入する前には、さまざまな業務特性に応じた設計が不可欠だ。業務性能を確保するには、緻密な性能設計も欠かせない。さらに、導入後も適切な運用管理が必要となる。

また、複数の業務を統合することで、トラブル時には障害を切り分けることが難しくなるといった課題も抱えることになる。万が一のトラブル発生の際には、すべての業務が停止し、莫大な機会損失が発生することも否定できない。さらに運用の共有化により、一部業務へのアクセス過多が、優先すべき他業務のレスポンス悪化を引き起こす可能性も考慮しなければならない。

こうした課題を解決するのが、「ETERNUS DX S3 series」と「ETERNUS SF Storage Cruiser 16」である。

富士通フォーラム2014 東京で展示されていたストレージ

物理容量最大4224TBの「ETERNUS DX600 S3」

ETERNUS DX S3 seriesは、ストレージ運用の複雑化やインフラ投資の増大、新たな業務追加に伴う処理遅延など、ストレージシステムの課題を解決するディスクストレージシステムである。また、ETERNUS SF Storage Cruiser 16は、ETERNUS DX S3 seriesの様々な機能を制御するストレージ管理ソフトウェアだ。

ETERNUSについて説明した富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部の石浦裕一氏

近年は、データ量増大や多様化――いわゆるビッグデータ――により、システムに要求される役割の高度化が進んでいる。事業継続性が要求されるのはもちろん、投資/運用コストを最適化すべく、リソースがパフォーマンスを十分に発揮できるシステムでなければならない。ETERNUS DX S3 seriesは、これらすべての要求に応えるものだ。

優先業務のI/O性能を確保する「QoS自動化」機能

リソース活用の最適化で注目すべきは、「QoS(Quality of Service)自動化」機能である。これは、ビジネス要件に応じた性能リソースの自動割り当て機能であり、優先業務のボリュームに必要なレスポンスタイムを設定するだけで、I/O性能(帯域)を自動チューニングする。優先度の高い業務(アプリケーション)のI/O性能を確保できるため、他の業務のI/O負荷変動の影響を受けることなく安定したパフォーマンスを保つことができる。

富士通プラットフォーム技術本部プロダクトソリューション技術統括部の石浦裕一氏は「従来であれば管理者は、業務ごとにI/O性能をチューニングする必要があった。しかし、ETERNUS DX S3 seriesでは、優先度の高い業務の目標性能を設定するだけで、そのほかの業務の負荷増加によるリソース干渉を抑え、自動でI/O性能を確保できる。運用管理者の業務負荷低減の観点からも、メリットは大きい」と語る。

アクセス頻度に応じてドライブ間でデータを自動配置する「自動階層制御」機能

「自動階層制御」も運用自動化のカギとなる機能だ。これは、アクセス頻度に応じて、保管データを最適なドライブに自動配置するもの。アクセス頻度の高いデータを高性能なSSD(Solid State Drive)に配置したり、アクセス頻度が低いデータを大容量で安価なニアラインディスクへ配置したりする。自動でデータを再配置することで、高速な処理と効率的なリソース運用が実現すると同時に、データ管理工数を削減し、運用コストの低減が可能だ。

ストレージへのI/Oアクセス先を自動で切り替える「Storage Cluster」

事業継続性を実現する機能では、「Storage Cluster」に注目したい。これはストレージへのI/Oアクセス先を自動で切り替える機能で、通常運用時はPrimaryとSecondaryのストレージでデータを同期する。そして万が一、Primaryのストレージでトラブルが発生した場合には、管理サーバが異常を検知して瞬時に切り替えるというものだ。

以前はサーバのトラブル時に備え、HA構成で業務の可用性を高めるのが一般的だったが、ストレージ自体に外部要因などでトラブルが発生した場合には業務停止によるビジネス機会損出の可能性がゼロではなかった。しかし「Storage Cluster」は、ストレージへのI/Oアクセス先を自動で切り替えて業務を継続する。そのため24時間、365日のシステム運用が可能になり、ビジネス機会損失を抑制できる。

そして、これらETERNUS DX S3 seriesの各機能は、ETERNUS SF Storage Cruiser 16により監視/制御されている。

最大容量5.6TBのSSDキャッシュ「Extreme Cache」

もう1つ特筆すべきは、性能向上だ。ETERNUS DX500 S3/DX600 S3はコントローラー内蔵型SSDキャッシュ「Extreme Cache」をサポートしている。これはPCI-Express(PCIe)接続のSSDキャッシュで、コントローラー内に大容量キャッシュの搭載を可能にすることで、リードアクセス時のキャッシュヒット率を飛躍的に向上させる。最大容量は5.6TB(テラバイト)。これにより、要求性能に対して必要となるディスクドライブが大幅に削減できる。

Extreme Cacheは、最大5.6TBまで搭載可能

石浦氏は「例えばExtreme Cacheのキャッシュヒット率30%の場合、オンラインHDD 100台を搭載した場合とオンラインHDD 100台にExtreme Cache 4台を追加した場合を比較すると、最大4倍の性能向上が見込める。つまり、小数のExtreme Cacheを追加することで、大幅に性能が向上するのだ。また、要求性能を実現する際にHDDのみの構成と比較し、小数のExtreme Cacheと少数のHDD構成で実現できるようになるため、搭載HDD本数を大幅に削減可能だ。低消費電力化が大きな課題となっている仮想化環境構築にとって、非常にメリットとなるだろう」と語る。

Extreme Cacheが最も実力を発揮するのは、VDI(デスクトップ仮想化)環境におけるBoot Storm問題の解決だ。「クライアント端末の起動が集中する始業時間帯は、大量のリード処理が発生する。そのような状況下でもExtreme Cache活用で業務性能を確保すれば、ユーザーがストレスを感じることなくクライアント端末を起動できる」と語る。

発表間もないオールフラッシュアレイ「ETERNUS DX200F」の展示も

そして、性能向上で今後目が離せない製品としては、2014年 5月8日に富士通から発表された「FUJITSU Storage ETERNUS DX200F」だ。同製品は、データの記憶媒体にSSDを搭載したオールフラッシュアレイである。富士通フォーラム2014でも早速、実機が展示されていた。

データベースや仮想化環境で実際に多く使用されている、ブロックサイズ(サーバとストレージ間でデータをやりとりする際のデータのサイズ)が8キロバイト以上のアプリケーションにおいて、高いパフォーマンスを発揮するようアーキテクチャが最適化されている。石浦氏は、「ビッグデータの高速分析や、上述のVDI環境におけるBoot Storm問題の解決にも活用できる」と適用シーンの例を挙げた。

5月8日発表されたばかりのオールフラッシュアレイETERNUS DX200F