米Dellは、米国時間の2014年3月5、6日の2日間、テキサス州オースティンの同社本社において、Dell Precision Press Dayを開催した。そのなかで、ワークステーション製品のデザインを担当する米Dell デル・オン・デルプロダクトデザイン&イノベーション担当グローバルデザインディレクターのJo Jasinski氏と、米DellのデルコマーシャルモバイルプロダクトのインダストリアルデザインディレクターのPaul Doczy氏に取材する機会を得た。同社のデザインに対する姿勢や、デル製品の素材の選定などに関する基本的な考え方を聞いた。
米Dell デル・オン・デルプロダクトデザイン&イノベーション担当グローバルデザインディレクターのJo Jasinski氏(右)とデルコマーシャルモバイルプロダクトのインダストリアルデザインディレクターのPaul Doczy氏 |
--モバイルワークステーションのDell Precision M3800は、薄さ18mm、重量1.88kgという世界最薄、最軽量を実現しています。ここにはどんな努力があったのでしょうか?
Doczy氏 モバイルワークステーションのような製品においては、材料の選定が大きな意味を持つことになります。また、高性能なグラフィックボードを搭載するわけですから、放熱の問題を解決するという点での工夫も必要です。また、モバイルワークステーションであるとはいえ、操作性を失うことはできません。モバイル環境で利用できるように、キーボード、タッチパッドなどの搭載にも配慮しています。その点でも、Dell Precision M3800は多くのイノベーションを実現した製品だといえます。モバイルとしての高いレベルを追求し、より薄く、より軽量なものを開発する努力を行い、さらに強度においても改良を図っている。それを実現するための資材の選定にもこだわっています。軽量化、薄型化しながらも、パフォーマンスを維持するための検証を何度も繰り返しました。これは、製品出荷後も継続的に取り組んでいます。
--設計には、どれぐらいの期間をかけたのですか?
Doczy氏 Dell Precision M3800は、設計をゼロから開始した製品でしたから、1年~1年半をかけて取り組みました。デスクトップワークステーションでは、デザインの寿命が長いため、1年半~2年をかけて開発しますが、モバイルワークステーションは設計が短期間で変更するため、短い期間で設計作業をしなくてはなりません。そして、グローバルのあらゆる基準に対応した仕様にしています。また、耐久性、柔軟性、安定性を実現できるデザインが必要で、ソフトウェアのデプロイメントに対しても、有効なデザインということを考慮しました。エキサイティングな製品であることを立証できたデザインだと自負しています。
--素材の選定にはどんな形で取り組んでいるのですか?
Jasinski氏 デザインセンターは、デルの本社があるオースティンをはじめ、全世界5カ所に設置しています。また、これとは別に中国・上海の拠点には、数人のデザインセンターに所属する社員がいるのですが、彼らの主な仕事は、新たな素材探しであり、担当者は常に席にいなくて、連絡が取りにくいことが多いですね(笑)。
Doczy氏 材料はカーバンファイバー、アルミニウム、シリコンなど、多岐に渡りますが、製品の特性にあわせて、適材適所で素材を選んで最適化した形で活用しています。コマーシャル向けの製品においても、XPSのようなハイエンドコンシューマ製品で活用したノウハウを展開する場合もありますね。
Jasinski氏 ハイエンドに類する材料は、まずはハイエンドの製品に活用することになります。ミッドレンジやエントリー領域の製品には、コストを考えながら、どの材料をどこに、どう使うかが大切な要素となります。カーボンファイバーは、モバイル領域の製品において効果的な材料でありますが、競合他社もデルのかかとにかみつくように、この材料の採用に関しては、すぐ後ろにいることは理解しています。
Doczy氏 材料のなかには、開発と量産化には、時間がかかるものもあります。また、試作はできたが、量産が難しいというものもあります。新たな素材はパフォーマンスを確かめ、パーツの量産にどう持って行くかが鍵です。これが可能になれば、さらに、メインフレームの製品群にもその材料を展開でき、広い領域の製品に採用することができます。
Jasinski氏 材料の選定においては、大量量産に対応できるものなのかどうか、コストとして見合うのかどうか、そして最後に、信頼性があるものなのかどうかといった要素によって、この材料を、どの製品に採用するのかを決定していくことになります。
Doczy氏 なかには、ゲーマー向け製品「エイリアンウェア」のように、本体の開発者自らが材料にこだわるような製品もあります。
--ワークステーションのPrecisionシリーズにおける設計ではどんな点にこだわっていますか?
Doczy氏 デスクトップワークステーションにおけるエンドユーザーの頭痛の種は何か。それは、たまに発生するパーツの交換において、どれだけ速く、簡単にアクセスでき、どれだけ速くリプレースできるかという点です。ビデオ編集作業をしていて、そこで電源が落ちてしまった場合には、すぐに電源ユニットを替えられなくてはなりません。また、ある官公庁ではある期間ごとに、ハードディスクのコンポーネントに対してアクセスしなくてはならないというルールがあります。そのためにアクセスしやすい方向で設計し、レバーをつけてすぐに交換しやすくするといった設計が必要です。また、モバイルワークステーションでは、イージードッキングにより、複数のディスプレイを利用しながら操作できるといった設計も求められます。ユーザーが利用する上での問題点を見つけだし、それを解決するために設計するわけです。
Jasinski氏 プロフェッショナル向けならではの堅牢性が求められるのは当然のことです。報道カメラマンやクリエイションの高い映像を撮影するカメラマンにとって、カメラそのものは大切なものですが、写真データも非常に大切なものです。つまり、撮影した写真データを編集者に送信したり、編集するためのコンピュータも、それを同じぐらいのレベルでプロシェッショナル仕様であり、堅牢性が高いものでなくてはなりません。コンシューマ製品は単にインターネットにアクセスできればいいというものですが、ワークステーションではカメラマンや編集者の信頼性を勝ち得るような仕様水準でなくていけません。
--Dell Precision Press Dayでは、エントリーレベルのモバイルワークステーション「Dell Precision M2800」を発表しました。これはどんな基準で材料を決めていますか?
Doczy氏 Dell Precision M2800は、1,119ドルからというエントリー価格の設定とした製品です。しかし、Precisionシリーズが決めている筐体の耐久性、信頼性の基準に合致したものとなっています。軽量化と耐久性、そして低価格を両立するために、本体材料にはマグネシウムを使用しています。他のプロフェッショナルワークステーションモデルと同じ水準を実現し、操作性を損なわないものにしています。エントリークラスのモバイルワークステーションとはいえ、プロフェッショナルのための製品であるという基本姿勢は譲っていません。