富士通研究所は、クラウド上の処理やデータの一部を広域ネットワーク上のサーバに分散配備し、サービス要件の変化に応じてシステムの構築・運用を自動化する分散サービス基盤技術を開発したと発表した。
クラウド上のアプリケーションや一部の処理を分散させるには、ネットワークを中継する複数のゲートウェイサーバのうち、いずれで実行すると通信トラフィックの削減効果が最も高いかという、処理の効果的な配備先を事前に設計することが重要だが、効果的な配備先は、機器のデータ発生量、ネットワーク上のゲートウェイサーバの位置、処理内容、ネットワークの通信コストなどを総合的に評価して判断する必要で、従来の人手による設計では、設計の長期化にともなうコスト増や、急激なデータ量変化への迅速な対応が困難という課題があったという。
富士通研究所が開発した自動配備を効率化する技術は、「配備先計算の高速化技術」と「管理トラフィックの削減技術」の2つ。
配備先計算の高速化技術では、個々の処理をいずれのゲートウェイサーバで処理するかという設定を、配備する処理の特性に応じて、ネットワークの最短経路上のゲートウェイサーバを優先するか、機器とネットワーク上の近さを優先するかを組み合わせて探索するアルゴリズムを開発した。これにより、計算時間を従来の約500分の1に短縮したという。
管理トラフィックの削減技術は、配備先計算において最適候補だけでなく次候補まで計算し、さらに次候補が最適解となるトラフィック変化条件を計算して、計算結果と処理をゲートウェイサーバに配備することで、再配備に必要な変化だけを監視サーバに送信するもの。これにより、再配備に影響しない軽微な変化は監視サーバに送信されなくなるため、管理トラフィックを従来の定期的に送信する方式に比べて約700分の1に削減することが可能だという。
これらにより、接続可能なデバイス数などのサービス要件の変化に応じて、最適な処理の配備先を決定し自動配備でき、これにより、人手では不可能であった数十万台規模のデバイスとサーバを含むシステムの運用にも耐えられ、分散システムの再配備にともなう構築期間を数日から数分に短縮できるという。
同社では今後、クラウドシステムに複数のサービスを収容するマルチテナント化や、ネットワークの構成を動的に変更可能なSDNなどのオープンな技術と連携させ、2014年度中の実用化を目指す。