RICOH SG 3120B SF

リコーが1月9日に発表した世界初のバッテリー搭載型ファクス機能付き複合機「RICOH SG 3120B SF」。1月17日より販売を開始したが、今回、製品開発の狙いについて話を伺った。

「バッテリーを搭載した複合機ではHPさんが3kg程度の軽量モデルを販売されていますが、ファクス機能付きで普段使いができる複合機としては世界初のものとなります」

この様に語るのは、リコージャパン ドキュメントソリューション事業本部 プリンター事業推進室 プリンター商品グループでシニアスペシャリストを務める福留 剛氏だ。福留氏によると、ベースモデルである「RICOH SG 3120SF」から電源部分を外部に出すことでバッテリースペースを確保している。

「元々、インクジェット複合機をベースにしていますので、低消費電力という特徴がある。ベースモデルが一般の業務用途で利用されているため、普段からご利用いただくと共に災害時などでいざという時にそのまま利用できるようなモデルになりました」(福留氏)

その言葉通り「暗闇でも闘える」をコンセプトとして、開発された3120B SFだが、背景には当然とも言うべき「東日本大震災」の経験がある。震災当時、グループ会社の東北リコーが、プリンターとUPS(無停電電源装置)をセットで薬局や漁協へ貸し出し支援を行なっていた。

薬局は薬事情報の出力、漁協では津波被災の漁船や施設、岸壁復興資料の出力に活用しており、東北リコーなどグループ各社も電気の復旧が見込めない中でUPSとの組み合わせによるプリンターの活用を行なっていたという。

「災害時にノートPCはあっても、出力できる機器がないというケースが多くありました。被災地では、紙を利用した情報伝達、ドキュメントという視覚訴求を必要とするケースが多いにも関わらず、プリンターが使えず、手書きでビラ配りをしている状況を見て、BCP(事業継続計画)の観点からも、非常時のアウトプット環境の必要性を認識したのです」(福留氏)

同社は2013年7月に大型複合機向けの蓄電システムを発表しているが、その時も大きな反響があったという。「震災以降、BCPを考える上でプリンターも必要だよねということで興味を持たれるお客様は多い。蓄電システム単体で150万円~200万円という価格帯のため、金融機関など導入されるお客様は限られていましたが、今回の製品は複合機だけで10万円以下ということで、コストパフォーマンスも上々」(福留氏)。

BCPだけではなく、イベント会場の受付などでの印刷物出力や、新興国の電力供給が不安定な地域における非常時電源といった使い方も想定している。また、データ通信に利用するUSBポートは電源出力にも対応。スマートフォンの充電が可能となっている。

スマートフォンが充電できる(出力は0.5A)

ピークシフト設定も可能

このように取り外しが可能

「暗闇でも闘える」のコンセプト通り、排紙部分にLEDライトを搭載

気になるバッテリー稼働時間だが、連続コピー枚数は500枚、印刷枚数では1000枚となっている。また、ファクス送信は300枚、受信は250枚だ。未使用状態での待機可能時間は約17時間、1時間あたり100枚ペースで印刷した場合の稼働時間は約7時間となる。

「1日持たないというところでやや短いと思われるかもしれないが、枚数としては、十分な数字だと思う。特に災害時の初動対応期である2~3日間利用したいという方には、オプションで予備バッテリーも用意している。本体の実勢価格が7万円半ば、バッテリーが2万2000円で、予備を購入しても10万円を下回る」(福留氏)

最後に、BCPだけではない「RICOH SG 3120B SF」の魅力を福留氏は次のように語ってくれた。

「もちろん、BCPを念頭に開発を行なったし、調剤薬局といった震災時にニーズのある層を狙っていきたいという思いもある。ただ、プレマーケティングで運動会の会場に貸し出しを行なったところ、賞状の印刷で子供たちが喜んでくれた。そういったニーズにも応えることができるという手応えはある」