日立ハイテクノロジーズと同社の100%子会社である日立ハイテクファインシステムズは1月20日、ハイボットから超高圧架空送電線点検ロボット「Expliner」(画像)の独占販売権を取得。架空送電線検査装置の開発・設計・製造および国内外での独占的な販売活動を行うことで合意し、新たに超高圧架空送電線検査の自動化・効率化を実現する送電線検査装置事業に参入することを発表した。

超高圧架空送電線点検ロボット「Expliner」

電気エネルギーは張り巡らされた送電線網を通じて供給されているが、その安定性の確保には、予防的な点検・検査が欠かせない。現在、発電所から居住地域までの鉄塔を伝う超高圧架空送電線は、主に双眼鏡やヘリコプターを使用しての目視点検のほか、作業員による宙乗り点検が行われている。しかし、宙乗り点検は作業員が電線上を歩いて点検するために多くの労力と時間と危険性を要してしまい、また感電しないために送電を停止して行う必要があるなど、検査精度のさらなる向上と効率化が大きな課題となっていた。

こうした課題に対してロボット・ベンチャーのハイボットは、2006年から関西電力、ジェイ・パワーシステムズ、東京工業大学と共同で技術開発に取り組み、超高圧架空送電線点検ロボット「Expliner(エクスプライナー)」を開発。2010年の第4回ロボット大賞では、「中小企業基盤整備機構理事長賞」を受賞している。

Explinerは超高圧架空送電線上を自走し、架空送電線の表面状況や外径寸法を測定する機能を持つ。ハイボットが独自開発したカウンタウェイトを用いたバランス制御機構により、「懸垂がいし装置」などの架空送電線上の障害物を乗り越えることができ、「多導体送電線」における複数電線の同時点検が可能だ。

ちなみにがいしとは、送電線と鉄塔との間を絶縁するための器具のことで、懸垂がいし装置とは、架空送電線を鉄塔から懸垂して支える連結されたがいしのことである。また多導体送電線とは、同じ電位(相)を持つ電線を2本(2条)以上に分割して電気を流す架空送電線のこと。Explinerの当面のターゲットは、2導体および4導体である。

日立ハイテクファインシステムズは今後もハイボットおよび関西電力とのコラボレーションにより、架空送電線検査装置の技術・製品開発に向けて取り組んでいくとし、さらに日立ハイテクグループのグローバルネットワークを活用し、国内外に向けて2014年度から販売を開始するとした。

日立ハイテクグループは、今回の架空送電線検査装置事業への参入により、世界各国の架空送電線検査において自動化とコスト低減、検査精度の向上を実現し、成長が見込まれる社会イノベーション分野で新たな社会インフラ検査事業の拡大を目指していくとしている。