矢野経済研究所は1月7日、国内の介護ロボット市場の調査を実施し、その結果を発表した。国内の介護ロボット市場規模(メーカ出荷金額ベース)は、2011年度が1億2400万円、2012年度は1億7000万円となり、2013年は2億1300万円となる見込み。さらに、2015年度の国内の介護ロボット市場規模を23億円、その後も順調に市場は拡大し、2020年度には349億8000万円まで拡大すると予測している。
調査期間は2013年10月~12月、調査対象は介護ロボットメーカおよび販売会社、研究機関など、調査方法は当社専門研究員による直接面談、電話・メールによるヒアリング、文献調査併用となる。
同調査における介護ロボットとは、非産業用のロボット(サービスロボット)の中で、介護福祉機器ロボットとして主に高齢者の介護目的(排泄支援、食事支援、移乗支援、歩行支援、見守り支援など)に使用されるものを指す。センシング・自立制御・駆動のロボット3条件を満たさなくても、それらの技術を応用した福祉機器も含む。また、医療機器に属するリハビリロボット、コミュニケーションやセラピーを目的としたロボットは対象としていないが、機能が重複することもあり明確に区分できないものもある。
2012年度の介護ロボット市場を目的別にみると、排泄支援が1億2000万円と全体の7割を占め、歩行支援の3000万円、その他2000万円と続く。排泄支援については、自動排泄処理装置は要介護認定を受けると1割の自己負担で購入されていたが、介護保険適用が購入からレンタルに変更されたことにより、利用者の負担感が弱まり在宅介護での需要が拡大。既に介護保険適用対象であった「ヒューマニー」や「スマイレット安寝」に、2013年度から「Minelet爽(マインレットさわやか)」が加わることで引き続き拡大を見込む。
2012年の経済産業省と厚生労働省による「ロボット技術の介護利用における重点分野」の策定を受け、2013年度から経済産業省の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」が開始され、採択事業者が決定した。今後、国家プロジェクト(国プロ)として、2015年度までに最終製品化を目指すことになる。
これまで介護ロボットの普及が進んでこなかった実態を鑑み、経済産業省では現場のニーズを優先させ、ステージゲート方式(開発ステージ毎に結果検証を行う方式)による確実な開発と低価格化、介護現場に普及させるための公的支援と補助金を基本方針に掲げている。効果が明らかで安価で使いやすい介護ロボットとして、開発だけでなく普及させるための支援に重きを置いているという特徴がある。
国プロの採択を受けて46件のロボット開発が着手され、その内訳は装着型移乗支援4件、非装着型移乗支援7件、移動(歩行)支援9件、排泄支援5件、見守り支援21件。装着型移乗支援は、モータや弾性材、空気圧を利用する方式があり、その構造によって価格差が出ると考える。安全性や肉体的負担低減がポイントとなり、今後の実証試験を通して完成度が高められると予測。
非装着型移乗支援は、仰向けで抱き上げるものと前屈みで抱き上げる方式がある。補助具を用いたり、浴室内での使用を想定したりとメーカによって方式や構造に違いがあり、価格差も出るとしている。
非装着型移乗支援では、装着型とは異なるアプローチが進んでいるという。移動(歩行)支援では、推進と抑速で高齢者の負担軽減と安全を確保することが求められ、シルバーカーとの違いが追求され、低価格化することも課題となる。
排泄支援では、座位姿勢型と寝たきり型で開発が進み、寝たきり型排泄支援については基本技術が完成している。座位姿勢型排泄支援では排水機構の採用が進んでおり、後処理不要や防臭効果などの機能が追及されている。いずれも低価格にすることが課題となるという。見守り支援では、センサによる離床行動の検知で様々な方式が検討されており、正確に離床行動を検知することがポイントとなり、今後の実証実験を通して完成度を高めていく。
いずれも、目的に応じた効果の確立と購入可能な低価格化が意識されており、必ずしもすべてが最先端技術を追求したものではないが、実用性を優先している点は共通する。これまでの介護ロボット開発とは、この点で異なることが覗えるという。
同社は、将来的に介護ロボットの開発は当面国プロで採択されたものが中心になると考えている。国プロによる介護ロボットは、早いもので2014年度には製品化されるものが出始め、最終製品の見通しが付き販売が本格化するのは2015年度からと予測している。その間に高齢者数は増え、それに比例して要介護認定者も増え、介護現場における介護ロボットの必要性は高まるものと予測する。2015年度には介護保険制度の見直しも予定され、介護ロボットの介護保険適用製品が増加すれば、市場拡大の追い風なるとしている。