2013年12月12日、都内のネットギアジャパン本社において、昨今のNASにまつわる動向と同社の最新のNAS製品を紹介するセミナーが開催された。
最初のセッション「ReadyNASで構築する仮想化環境~VM-Wareを利用したReadyNASとの連携」に登壇したのは、ネットギアジャパンのセールスエンジニア 渡部敏雄氏だ。
仮想環境の普及のなか、顕在化したバックアップの課題
1~10台程度の小規模なシステムを中心に、企業での仮想化の導入が急速に進んでいるなかにあって、顕在化したのがバックアップにかかわる課題だ。2013年のIDC Japanの調査によると、多くの企業が、バックアップ所要時間の増加や、物理環境と比べてのバックアップ運用の複雑化、物理と仮想サーバのバックアップ運用の統合が困難、などといった仮想化環境でのバックアップの課題を掲げている。
そこで渡部氏は、一般的にパフォーマンスが高いと思われているiSCSIと、逆にiSCSIと比べて速度が遅いとされているNFSのパフォーマンスを比較し、どちらもほぼ同等、もしくはNFSの方が上回るというという計測結果を示した。その要因は、ネットワークスループットの影響と、同期書き込みと非同期書き込みの差異にあるという。特にローエンドのNASを採用する場合はiSCSIよりもNFSを利用した方が、技術的にも運用しやすくメリットが大きい。
こうした結果を受けて同氏は、仮想化システムにおける利用用途や目的に合わせた、同社のNAS製品、「ReadyNAS」と「ReadyDATA」による推奨する構成を示した。
例えばDR目的であれば、ローカルサイトに2台のReadyNASを同期し、バックアップサイトにもReadyNASを置いて同期させ、すべてをNFSにするという構成となる。また、2台のReadyDATAでiSCSIマウントによるLUNボリュームを同期させることで、差分データごとをレプリケーションしてストレージ容量を効率的に使用する構成となるという。
国内企業の事例に見る、ReadyNASの効果的な活用法
続いて渡部氏は、実際にReadyNASを導入してバックアップの強化やストレージ運用管理の効率化を実現した国内企業の事例を紹介した。
女性用インナーウェアなどを販売するピーチジョンでは、東日本大震災で仙台市に置かれたサーバなどが深刻なダメージを受けた。そこで同社は、ストレージシステムが老朽化していたこともあり、ReadyNASを用いた東京と仙台での遠距離バックアップ体制を確立した。東京側では、十数台の仮想サーバと百数十台のWindows、Macが混在したクライアント環境の共有ストレージにReadyNASが使われている。
ピーチジョンがReadyNASを選定するポイントとなったのは、豊富な機能と多くの企業での導入実績、GUIでの簡単な設定、パフォーマンスと信頼性、頼れるサポート、そしてコストパフォーマンスの高さだ。
「東京から仙台に毎晩バックアップを実施しているが、これまで大きな問題もなく稼働している。特筆すべきは、震災での経験から、何かあった場合には実際に手で持ち運べるようにデスクトップ型を採用している点だ」と渡部氏はコメントする。
他にも同氏は、VMware仮想環境の構築とバックアップ対応を同時に解決したあるソフトウェア会社の事例や、増加を続ける設計データや個人データをストレージシステムに集約したある製造業の事例といった、ReadyNASの効果的な活用方法を紹介。そしてReadyNASとReadyDATAの製品ラインナップを説明したうえで、
「同じ程度の価格でも、より豊富な機能と高いパフォーマンスを発揮するところに当社のNAS製品の強みがあります」と、競合他社製品と比べた優位性を言及した。
ReadyNASとReadyDATAに施される更なる機能強化の内容とは
続いて、米NETGEARのプロダクトマーケティングマネージャーでストレージ担当のMatt Pahnke氏と、同社プロダクトラインマネージャーでストレージ担当のBrett Hesterberg氏が、来年にかけてリリースするReadyNASとReadyDATAの新製品の概要について明らかにした。
まずMatt氏は、「ReadyNASは、低コストかつ導入管理が楽で、最新の機能を提供する。低価格で購入してすぐに豊富な機能を使いこなせる一方で、コンサルなども必要としないことから長期的なランニングコストも抑えられるだろう」と語った。
同氏は、ReadyNASの導入形態を、「Fast」「Faster」「Fastest」「Extreme」の4段階のカテゴリーに分類。Fastはホームユーザーで1人から4人ぐらいを想定、Fasterは5人から25人のユーザーを、Fastestは25から250ぐらいのユーザーを、そしてExtremeは300人以上を想定しているという。
来年1月に国内でもリリース予定の新製品「ReadyNAS716」は、CPUにインテルのXeon Quad Coreプロセッサを搭載し、10Gbpsのイーサネットポートと16GBのメモリを搭載する。
Matt氏は、「250台もの端末に向けて、HD画質の映像を同時配信が可能だ。世界最速のデスクトップNASと言っていいだろう。来年も、既存プラットフォームに更なる新機能を付け加えていく予定だ」と宣言した。
続くBrett氏は、Ready DATAの最新OS1.4を12月中にリリース予定だとしたうえで、フェイルバック・レプリケーション機能が新たに加わることを明らかにした。
「この新機能はとても重要だ。フェイルバック・レプリケーション機能の最大のメリットは、DRを簡単に実現できることである」と同氏は強調した。
例えば、メインサイトを東京にして、遠隔地のセカンドサイトにレプリケーションを行うというのが現在の一般的なDRのやり方だ。もしメインサイトが災害などで被害を受けて稼働しなくなれば、セカンドサイトが稼働可能であればそのままスイッチして運用を続けることができる仕組みを導入している企業も多い。だが、これまでだと、メインサイトが停止した際にセカンドサイトのデータを使った場合、新しいデータはセカンドサイト側に蓄積されていくかたちとなる。東京のメインサイトが復活した後にセカンドサイトに更新されたデータを戻そうとなったときには、専用のツールが必要であり、コストと時間がかかってしまう。
そこで、フェイルバック・レプリケーション機能を使えば、セカンドサイトで更新されたデータだけを東京のメインサイト復旧後にそのまま戻すことができるようになるのだ。差分だけをコピーすることで、結果としてセカンドサイトと東京のメインサイトのデータが同期できるのである。
「これまではフェイルオーバーはできたがフェイルバックは難しかった。かなり革新的な機能だと自負している」と、Brett氏は主張してセミナーを終了した。